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注目の“リアルテックファンド”が投資先第1号に選んだ企業

ソーラーパネル清掃ロボットの未来機械は「闘うメイカーズ」だった
注目の“リアルテックファンド”が投資先第1号に選んだ企業

左上は未来機械の三宅社長、右上はファンドを取り仕切るユーグレナの永田氏

 ユーグレナなどが出資するベンチャーキャピタルファンド「次世代日本先端技術育成ファンド(通称・リアルテック育成ファンド)」の第一号投資先に、ソーラーパネルの清掃ロボットを開発する未来機械(岡山県倉敷市、三宅徹社長)が選ばれた。未来機械は水を使わず自動でソーラーパネルを清掃する軽量ロボットを開発している香川大学発のベンチャー。

 中東では再生可能エネルギーへのシフトに伴い大規模なメガソーラーの設置計画がある。しかし砂漠地域では砂塵が付着し発電効率が低いのが課題。まだ水資源も潤沢ではなく、未来機械の技術が課題解決への可能性が高いと判断した。すでに中東でのテストを実施しており、今後、量産化へ移行する。

 リアルテック育成ファンドは未来機械の第三者割当増資を引き受け、量産化への開発資金を提供する。またファンドへの出資企業と連携し、中東でのマーケティングや販売支援を行う。

オンラインで完結しない技術が日本を活性化させる!


日刊工業新聞2015年05月11日付


 この1年ほどベンチャー投資がバブルである。新しい企業を育成することは産業の新陳代謝を促し悪いことではない。しかし、ウェブサービス系を中心に、一部のベンチャーキャピタル(VC)や証券会社などは上場をあおり、刹那的な戦略も散見される。そんな中で、ユーグレナなどが始めたベンチャー投資ファンドは、日本の強みを生かす技術に焦点を当てたもので、新しい支援スキームとして期待される。
 
 キーワードは「リアルテック(オンラインで完結しない技術)」―。金融出身が多い日本のVCはバイオや医療、エネルギー、ロボットなど研究開発型ベンチャーに対しリスクがとりにくい。ただこの分野こそ、日本に国際競争力がある。大学やスタートアップ企業が持つ可能性のある技術をリアルなビジネスとして顕在化させる試みだ。

 仕掛け人は、ユーグレナの上場を仕切った永田暁彦取締役。まさにユーグレナもそのようなベンチャー企業であり、その経験を生かせる。技術評価を担うリバネス(東京都新宿区)、上場をサポートするSMBC日興証券の3社が主体だ。

 そして今回、特徴的なのは日本たばこ産業(JT)、ロート製薬など5社の事業会社がファンドの出資者に名を連ねていること。ベンチャーと大手企業の事業連携も、より具体的になる。ユーグレナも日立製作所など事業会社が出資したことで、経営側も感化されたという。

 このファンドは当然利益を追求するが、本来、日の目を見るべき技術や人材を世に引き出すことを重要な使命とする。現在、投資先候補は約250社。大半が起業直後、あるいは創業前が対象。とにかくビジネス化に“汗をかく”という。

 東大発のロボットベンチャー「シャフト」を米グーグルが買収したが、本来は日本で資金調達なり、出口戦略が成されるべきだったと思う。IT系では成功した経営者の顔は何人も浮かぶ。リアルテックの分野でも、そのような人たちが多く出てくれば、日本の若い人たちの選択肢も増える。

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
永田氏は「日本の大学では日本らいしい研究をしているが、とにかく大学から出ない。だから民間化されない。IT系のベンチャーで成功した経営者の顔は何人も浮かぶが、研究者出身でいない。そこを変えていくためにロールモデルを見せていく」と話す。今後もリアルテックファンドの投資先に注目

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