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存在感増す日本の“中国人社会”、新・中華街はどこ?

存在感増す日本の“中国人社会”、新・中華街はどこ?

西川口駅周辺では中華の店舗が増えている

 4月から改正出入国管理法が施行された。従来は留学生、技能実習生、高度人材にしか認められなかった外国人の就労だが、改正により在留資格の幅が増えた。今後、日本で働く外国人はますます増えていくことが予想される。

 私はこれまで中国の社会事情やビジネス事情などを主なテーマとして、中国で取材活動を続けてきたが、近年は「日本の中の中国」にも関心を抱き、いくつかの著作も発表してきた。中国人留学生の実態や日本企業で働く中国人人材の活用、中国人観光客による爆買いの変遷などについてだ。昨年末にはそれらも含めて、在日中国人社会の最新事情を描いた「日本の『中国人』社会」を出版した。

 2018年6月時点で、在留外国人は約263万7000人。その3分の1近くを占めているのが中国人で、約74万人に上る(香港・台湾を除く)。

 この数字を日本の都道府県別の人口と比較すると、おもしろいことがわかる。最も近い人口が高知県(約70万人)。次が鳥取県(約68万人)。つまり、在日中国人数は、すでに日本の一都道府県の人口にほぼ匹敵するほど多いということだ。

 驚くのはそれだけではない。日本の高度外国人材の65%が中国人だという事実もある。彼らは日本にいても中国のSNS(ウィーチャット)を駆使し、独自のネットワークを築き、彼らだけのコミュニティーを形成している。そして、日本での存在感も日に日に増している。

 例えば、いわゆる3大中華街(横浜、神戸、長崎)には老華僑(79年の改革・開放以前に来日し定住している中国人)が多いが、近年勢力を伸ばしているのは新華僑(79年以後に来日した中国人)による新興のチャイナタウンだ。東京・池袋や新宿のほか、代表的な存在といわれるのは埼玉県川口市。人口約60万人の同市に住む中国人は約2万人。JR西川口駅前には、中国人向けのローカルな中華料理店が軒を連ね、隣接する蕨駅周辺には、住民の半数が中国人というUR都市機構の大型団地がある。

 中国人が最も多い大学として知られる早稲田大学に近い高田馬場や早稲田付近にも、中国人向けの中華料理店が増えた。この付近には、日本の大学受験を目指す中国人向け専門予備校が複数あり、その学生は5000人以上。彼らの受験指導をするのは同じ中国人の大学生や大学院生で、彼らの胃袋を支えているのも中国人が経営する料理店だ。このように、私たちが知らない間に、日本にはすでに「小さな中国人社会」がいくつも出来上がりつつある。

◇ジャーナリスト 中島恵
北京大学、香港中文大学に留学。日刊工業新聞記者を経て、フリーとなり、中国、香港、台湾、韓国などの社会・ビジネス事情を取材・執筆。著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』(日本経済新聞出版社、12年刊)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社、18年刊)など。
日刊工業新聞2019年4月10日

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