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病院の理髪店、客足が絶えない理由

確かな顧客ニーズと、いくらかの愛情
 勤めを休んでの病気入院も、症状が治まって経過観察となれば退屈する時も出てくる。ふと思いついて、病院の地下で見つけた床屋を試してみることにした。

 看護師さんを通じて予約すると、時間少し前に病室に理容師さんが現れ、パイプ椅子を広げて「さあ、どうぞ」。聞けば仕事の半分以上は“出前散髪”なのだとか。「店で待っていても暇なんで始めました」とのことで、移動制限のある患者には嬉しいサービスだ。

 寝たきりや鼻からチューブを入れたままの患者、意識のない患者を家族に頼まれてカットすることもある。「うまくできるとは限りません。ただ生きていれば髪は伸びますしね」。

 洗髪とひげ剃りをセットで予約した客は、地下の店で散髪する。他にも通院と同日で予約し、散髪していく外来患者の客が何人かいるという。からかい気味に「ファンなんですかね?」と聞いて「ケガで髪が部分的に生えない人や、頭の形が変わってしまった人は、普通の店には行きにくいらしいです」と返された時には言葉に詰まった。

 出前の200円を加えた代金は、街角のカット専門店よりずっと高い。ただその仕事ぶりには、ニッチでも確かな顧客ニーズと、いくらかの愛情を感じた。

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