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室内光がいらない新「抗菌ガラス」の仕組み

日本板硝子、米で来年前半投入
室内光がいらない新「抗菌ガラス」の仕組み

国際ディスプレー学会(SID)で展示された抗菌ガラス(5月、米国サンノゼ)

 日本板硝子は室内光が不要で表面に付着した細菌を殺菌する抗菌ガラスを開発した。ガラス表面の抗菌コーティングが細菌の外膜に作用し、細菌の細胞活動や細菌のデオキシリボ核酸(DNA)を損傷し、生存機能を阻害する仕組み。2020年前半に米国で先行販売し、同年内に日本や欧州に投入する。病院などの衛生的な環境が求められる分野のほか、スマートフォンやエレベーターのタッチパネルなど幅広い用途を見込む。

 今回開発した抗菌ガラスは、ガラス表面に抗菌機能を持たせた特殊な化合物をコーティングすることで室内光を不要にした。菌が触れると菌の外膜を損傷し、生殖機能が阻害されて、高い抗菌効果を発揮する。従来の抗菌ガラスは銅系化合物と光触媒膜の入ったガラスに蛍光灯、LED照明などの室内光が当たることで化学反応が起き、菌の増殖を抑制していた。

 開発した抗菌ガラスは病院や介護施設、保育園、公共施設など衛生的な環境が求められる分野の需要が見込まれるほか、ガラスに触る回数が多いスマートフォンやビル・商業施設のエレベーターのタッチパネルなどの用途が期待される。医療機関で働くスタッフの負担軽減のほか、院内感染を抑えるなど集団感染の拡大防止といった役割も見込める。

 現在、米国で試作品の性能を検証している。これまでの試験では、大腸菌や黄色ブドウ球菌に対して特に高い抗菌効果が観察されている。

 企業の環境配慮や社会性を評価して投資するESG(環境・社会・企業統治)投資を取り入れる機関投資家が増えている。新製品の投入により、「グローバルに展開する企業として、健康分野に注力することでESG評価を高めたい」(建築用・高機能ガラス事業部門のスティーヴン・ワイドナー営業・マーケティング本部長)考えだ。
日刊工業新聞2019年6月27日

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