ニュースイッチ

「一枚鉸」技術でチタン製ぐいのみ、将来は医療や航空向けに展開も

高桑製作所、会津塗とコラボ
「一枚鉸」技術でチタン製ぐいのみ、将来は医療や航空向けに展開も

加工したぐいのみ、左は断面

 高桑製作所(東京都大田区、高桑英治社長)は、各種金属のヘラ絞り加工を手がける。ヘラ絞りをさらに進化させた新技術「一枚鉸(ひとひらしぼり)」で一般向けにチタン製のぐいのみを製作している。

 ヘラ絞りは、金属板を回転させながらヘラを押し当て、立体加工する技術。同社が独自に開発した一枚鉸では1枚の金属板から二重構造の器の成形を可能にした。一般的な二重構造の金属製の器は溶接によるもの。高桑社長は「他の製品との違いは一見分かりにくいが、技術について説明すると、価値を見いだしてもらえることも多い」と話す。

 販促物として考案したのがきっかけ。「原案となる図面を現場に持っていったが、職人に普通のヘラ絞りでは加工できないと言われた」(同)。半年間業務の合間に時間を見つけながら挑戦し、安定した加工が可能になった。

 調査により他社では手がけていない技術と判明し、2017年に特許を取得した。大田区中小企業新製品・新技術コンクールの「おおた秀逸技能賞」受賞など、技術の“お墨付き”を得たことで一般販売に踏み切った。

 会津塗とコラボレーションしたり、独自の熱加工で模様付けしたりするなど、「和」のデザインにこだわった。今後もバリエーションを拡大する。また金属板一体加工の可能性を広げる面でも意義があるという。

 高桑社長は「医療機器や航空宇宙関連では、溶接を使わない部材の需要がある。製品を通し、選択肢として技術を知ってもらえれば」と話す。
(文=南東京支局・増田晴香)

<関連記事>
世界2位の超硬切削工具メーカーが日本市場に切り込む
日刊工業新聞2019年6月21日

編集部のおすすめ