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仏製CAD・CAMと日本の加工技術で“生きたショールーム”に

コダマコーポレーション、データの一気通貫でモノづくりをサポート
仏製CAD・CAMと日本の加工技術で“生きたショールーム”に

試作部・加工技術研究所で行われた見学会の様子

 あらゆる工業製品の図面を作成し、加工を担う工作機械を制御するのに欠かせないCAD/CAM(コンピューター利用設計・製造)システム。コダマコーポレーションは高品質なモノづくりと生産効率向上を狙いに、フランスのミスラーソフトウエア製3次元CAD/CAMシステム「トップソリッド」シリーズを提案する。すでに国内4500社以上の販売実績を持つ。

 前職でCAD事業の責任者だった創業者の小玉博幸社長は、30年以上前に仙台市でCAD/CAMシステムを積極的に活用していたエンジニアリングプラスチック金型メーカーの社長に出会った。当時は工作機械1台に一人のオペレーターがつくのが常識。だが、この会社は機械から数値制御(NC)データを作成するソフトなどを外し、2軸加工を無人で行っていた。

 設計部門で作成したCADデータを製造で活用できる。つまりCADとCAMをつなぐ「データの一気通貫」を東北地方の1企業が実現していたことに衝撃を受けた。まさにいまで言うIoT(モノのインターネット)に匹敵する発想である。「こんな考え方があるのかと目からうろこの思いだった」と振り返る。


 後年独立して国内メーカーのCADとCAMをそれぞれ販売していものの、モノづくりの効率化につながるデータの一気通貫を実現できる商材が容易に見つからなかった。こうしたなか、転機となったのが、1995年に米国の展示会で仏トップキャド(現ミスラーソフトウエア)の3次元CADシステム「トップソリッド」との出会いだ。小玉社長自身が課題と感じていたデータの一気通貫をコンセプトに開発した製品だったため即、販売権を取得。翌年に日本で販売を始めた。

 最新版の「トップソリッド7」シリーズは対応できる部品点数を旧モデルの8000点から10万点と大幅拡充した。種類も3次元ソリッドCAD/CAMシステム「トップソリッド・キャム7」、プラスチック金型設計支援システム「トップソリッド・モールド7」などをそろえる。

 トップソリッドシリーズは高精細な加工シミュレーションやツールパス(工具軌跡)、NCデータを効率良く作成できるのが特徴で、データ変換と修正が不要。設計変更が生じても製品モデルを修正するだけで自動で反映され、手戻りや修正漏れなどのミスを防げる。同社によると、トップソリッドシリーズの導入によって製品開発全体で3~5倍の生産性アップにつながるという。

 コダマコーポレーションと仏ミスラーソフトウエアの関係は良好だ。小玉社長は「ミスラーは開発志向の強い会社で日本のユーザー要望に応えてくれる」と信頼を寄せる。コダマが日本向けに販売やサポート対応に努めてきたこともあってミスラーも躍進。同社は仏第2位のCAD/CAMメーカーに成長し、2018年に仏政府機関などから持続的に急成長を遂げた自国の独立的企業として表彰を受けた。

 一方のコダマは2001年にソフト販売会社としては異色のモノづくりに参入し、樹脂切削加工などを手がける試作部を発足した。モノづくりに関わることで、データの一気通貫による生産効率向上などのメリットを顧客に訴求できると考えたからだ。

『本当にこういうことをやっているんだ』


 2009年には加工技術研究所を設立。複雑な形状の加工に対応した5軸マシニングセンター(MC)や複合加工機を導入したが「うまく活用できない」といった顧客の課題解決に対応するためだ。3次元CAD/CAMのトップソリッド・キャムなどを使い、5軸・複合加工機を有効活用するための加工技術の研究に取り組む。2013年には試作部と統合した。

 東京都羽村市の試作部・加工技術研究所には加工担当のエンジニアが19人、うち2人は女性だ。平均年齢は33歳と若手中心だが、若手でもトップソリッド・キャムを使えば、NCプログラミングの基礎である「Gコード」の知識がなくても加工できることからエンジニア全員がCAD/CAMや機械を自ら操作できる多能工として活躍している。

 こうした環境を生かし、試作部・加工技術研究所を「生きたショールーム」として活用している。経営者向けに年間10回ペースで「5軸・複合加工セミナー」を開催。5軸MCなどとトップソリッドシリーズと連携した加工事例を示すことで、CAD/CAMの導入促進につなげる狙いだ。「参加者から『本当にこういうことをやっているんだ』と驚きの声が上がる」(小玉社長)と手応えを感じている。

 試作加工は自動車関連が主体。取引先から試作品の仕上がりや納期などが認められ、その実績は昨年から一部の顧客が優先的にコダマコーポレーションに発注する「コダマ枠」を設けたほどだ。人材育成に力を入れ、加工経験を積んでいくことで自動車のほか、航空宇宙や医療などの分野で良質な試作品を提供することを目指す同社。近年は顧客のトップソリッドシリーズの旧モデルを最新版にグレードアップする業務にも力を注ぐ。

 少子高齢化に伴う労働力不足という構造的な課題に直面する日本。生産効率の向上を通じ「顧客の困り事を解決する」という経営理念を貫き、今後も独自のモノづくりにまい進する決意だ。
小玉博幸社長
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
【企業情報】 ▽所在地=横浜市都筑区茅ヶ崎中央3-1▽社長=小玉博幸氏▽設立=1989年1月▽売上高=24億8800万円(2018年3月期)

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