東芝・室町新体制で3人の“お目付役”はどんな考えの持ち主か

三菱ケミカル・小林氏、アサヒビール・池田氏、資生堂・前田氏。企業トップ経験者の社外取締役

 東芝は18日、不適切会計の再発防止に向け、取締役の過半を社外から起用する新経営体制を発表した。社外取締役として経済同友会代表幹事の小林喜光三菱ケミカルホールディングス会長ら7人を招聘(しょうへい)。経営の監督や透明性を強化し、信頼回復を急ぐ。また2015年3月期の業績予想を下方修正し、当期純損益が赤字に転落すると公表した。
 室町正志会長兼社長は社長職に専念し続投する。室町氏は同日に都内で会見し「ステークホルダーに大変ご迷惑をおかし、深くお詫びする」と陳謝した。

 社外取締役には経済界から小林氏のほか、アサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏、資生堂相談役の前田新造氏が就く。いずれも社長経験があり、企業統治の知見を生かしてもらう。一方、社内取締役は4人が就く。室町氏以外は31日までに決める。9月下旬に開催する臨時株主総会後に正式に発足する。

 東芝は委員会等設置会社だったが、外部からの監督が十分に機能していなかった。今後、監査委員会と指名委員会、報酬委員会の委員長や委員は、すべて社外取締役に任せる。また経営監督の中枢を担う取締役会議長も社外取締役が担う。社長評価制度を導入し信任を投票で決めるなど、経営の監視を強める。

 そのほかの社外取締役は東京理科大学教授の伊丹敬之氏、公認会計士の野田晃子氏と佐藤良二氏、弁護士の古田佑紀氏。

 社外取締役の中でも小林氏、池田氏、前田氏の3人は社長経験者だけに注目度は高い。数々の発言の中から、3氏の考え方やキャラクターがよく出ているものを、日刊工業新聞の記事から紹介する。


小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長 「日本的なるものを再検証する時期」


日刊工業新聞2015年7月29日付「広角」より


 経済同友会の代表幹事に就任以降、「日本」という国のあり方を自問する機会が増えてきた。最近、ふと気になるのが「日本的」なるものの存在である。2020年に向けて日本は大変革を遂げ、「ジャパン・バージョン2・0」に移行する必要があるが、その阻害要因になるのが日本的なるものではないか。日本的なるものを再検証する時期を迎えた。

 日本的経営という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)されて久しい。米国の経営学者のジェームズ・アベグレンが著した「日本的経営」が語源で、戦後の日本企業の発展は終身雇用、年功序列、企業内組合の存在があると指摘している。しかし、アベグレンの分析は今から半世紀以上も前のこと。時代の変遷とともに経営手法は刷新、時代にそぐわない日本的慣行に固執すること自体、日本の成長の障害になっている。

 歴史的には日本人は明らかに農耕民族である。村八分になることを恐れ、”和“を尊ぶ民族性を持っている。自分だけ儲ければ良いという発想はなく、格差が欧米に比べて少ないのはこうした考え方が日本人全体の共通価値観になっていることも一因だろう。しかし日本の強みを見いだすことには意義があるが、日本的慣行にこだわり続けることは意味ある行為とは言い難い。

 経営者の心の中の岩盤を打破し、新しい日本の創造を

 経済に関しても同様だ。経済はサイエンスである。稼ぐ局面は冷徹にかつ科学的に利益を創出し、再分配においては日本的な分かち合いの精神を取り入れるべきである。今の日本人の悪い部分は、肝心な稼ぐところで日本的なやさしさや弱さが露呈してしまう点。本当のやさしさは強くならないと育まれない。

 経営者も日本的なるものから脱却する必要がある。安倍晋三首相は「自らがドリルとなって規制という岩盤を打ち破る」と宣言したが、民間部門は政官財の既得権のトライアングルの一角を占めている。岩盤規制の改革などによっては、自社の事業が不利になったり、消滅したりすることすら起こり得るが、その際、経営者自身が抵抗勢力になってしまう可能性も排除できない。

 任期中は大過なく過ごすという後ろ向きの姿勢ではなく、自らリスクを取って果敢にチャレンジする積極的な経営を打ち出すことが肝要だ。経営者の心の中の岩盤を打破し、新しい日本の創造につなげたい。世界で戦って勝ち抜けば、自ずと日本的なるものがにじみ出てくるだろう。

日刊工業新聞2015年08月19日 1面の記事に加筆

明 豊

明 豊
08月19日
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三人の言葉はとても示唆に富む。総花的なアドバイスではなく、それぞれある問題に絞って1点突破で執行と一緒になって経営改革に取り組んでもらいたい。

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