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大陽日酸がダイバーシティー強く意識する理由

大陽日酸がダイバーシティー強く意識する理由

イノベーション事業本部のフリースペース

 「イノベーション」。大陽日酸が中期経営計画で掲げる重点戦略の一つだ。2018年には国際事業本部内の組織を独立し、イノベーション事業本部を発足した。大陽日酸は世界で数少ない、化合物半導体の製造に用いる大型の有機金属気相成長(MOCVD)装置メーカー。青色LED(発光ダイオード)の製造などに貢献した技術を、今後の化合物半導体の市場拡大を見込み、さらに飛躍させるのが新組織発足の狙いの一つだ。

 「オープンイノベーション」にも積極的に取り組んでいる。独自技術を持つ国内外の企業を発掘、連携を図る。ターゲットとする領域は3Dメタルプリンターなどの「アディティブ・マニュファクチャリング」、バイオジェット燃料などの「クリーンテクノロジー」などと多岐にわたる。「知見を取り込んでおき、時代の変遷を捉えて先手を打てるようにする」。執行役員イノベーション事業本部長の小林邦裕は熱をこめて話す。

新たな価値創造


 イノベーションを生むため、小林邦裕が強く意識するのがダイバーシティーだ。東京都港区にある同事業本部には外国人など多様な人材が集まる。フリースペースを設けるなど、社員らが交流しやすい雰囲気を作ることで、新たな価値創造を促している。

 大陽日酸は前身を含め100年以上の歴史の中で、低温や真空、高圧といったガスの技術を培ってきた。山梨事業所(山梨県北杜市)やつくば事業所(茨城県つくば市)では、ガスアプリケーション(応用技術)や空気分離装置などの技術の高度化に取り組んでいる。

 米プラクスエアからの欧州事業買収や独リンデからのHyCO事業買収で、新たな知見を持つ技術者が大陽日酸グループに加わった。常務執行役員開発本部長の小林伸明は「交流の機会を設けている。今後どのように発展するか、期待している」と説明する。

 「マチュア(成熟)な市場でオンリーワンを作る。日本発のイノベーションを成功させたい」(小林邦裕)。産業ガスの可能性を追求する取り組みは続く。
(敬称略)
日刊工業新聞2019年4月24日

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