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シニアは「映画館離れ」、若者は「映画離れ」は本当?

統計から見えてくる実態
 皆さんは最近、映画を観ただろうか。2018年の興行収入ランキングでは、昨年11月に公開されたボヘミアン・ラプソディーが興行収入100億円以上を記録して1位となり話題となった。

 経済産業省経済解析室が作成している第3次産業活動指数の、主要映画館の入場者数に基づく「映画館」指数の推移を見ると、2011年に大きく低下して以降は、徐々に上向きに推移してきていた。しかし、直近の2018年は再び低下した。
               

 実際、人々の映画鑑賞はどのように変わってきているのだろうか。下のグラフは、映画鑑賞について、2006年と2016年それぞれの年代別平均行動日数(1年間のうち何日その行動をしたか)を表したものである。
                   

 10代以上のどの年代でも減少していることが分かる。やはり全年代で、映画を観なくなったのだろうか。映画館以外での映画鑑賞について見てみると、50代後半以降は2006年に比べて増えており、特に60代後半や70代前半は1.5倍ほどに大きく増えている。つまり50代後半以降の年代については、映画鑑賞自体は行っているものの、映画館離れと言えそうだ。

 他方、50代前半以下の年代は、全て2006年に比べて減少している。特に世代が若くなるほど、映画館以外での映画鑑賞日数も低下する傾向が見られる。若者は、映画館からも、映画自体からも離れつつあるのかもしれない。
               

 なぜ若者は、映画館からも、映画自体からも離れつつあるのだろうか。社会生活基本調査(総務省)によると、2016年の平均自由時間は、65歳以上を除く全年代で2006年に比べて減少している。

 10代、20代については、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌への時間や、交際・付き合いへの時間は減少している一方、休養・くつろぎや趣味・娯楽の時間はおおむね増加している。趣味・娯楽の時間は増えているにもかかわらず、映画から離れつつあるのはなぜだろう。若者は代わりに何をしているのだろうか。

 ここで、近年急に増えつつあるインターネット(以下、ネット)利用時間について見てみよう。テレビ視聴時間とネットの利用時間について年代別に確認してみると、10代、20代は2015年頃にネット利用時間がテレビ視聴時間を抜き、その差は広がっている。30代も逆転間近の様相だ。若い世代は、映画鑑賞だけでなくテレビ視聴時間も減っており、代わりにネット利用時間が増えているようである。
                  

 では若い世代は、ネットでどのようなサービスを利用しているのだろうか。1日のネット利用時間を、サービス別、年代別に比較してみると、10代、20代は「ソーシャルメディアを見る・書く」(以下、SNS)が一番長く、「動画投稿・共有サービスを見る」(以下、動画サービス)や「オンラインゲーム・ソーシャルゲームをする」(以下、ゲーム)なども多く利用されている。

 視聴者が観たい時に映画などの映像コンテンツを観られるビデオ・オン・デマンド(VOD)も少しずつ伸びてきてはいるものの、まだ割合としては低いようである。

 若者にとって、こうしたネットを通じたオンラインサービスの利用時間が増加し、趣味・娯楽、あるいはくつろぎの時間となっていることが、テレビなどに使う時間はもちろん、映画鑑賞に使う時間を減らしている要因の一つとして考えられる。

 50代以降の世代では、映画館以外での映画鑑賞は増えているものの、世代が若くなるほど映画館以外も含めた映画鑑賞も減っており、代わりにSNSや動画サービス、ゲームなどでネットを利用する時間は増えていることが見受けられた。
                   

 このことは、第3次産業活動指数でも、例えばコンテンツ配信業務指数の大幅な増加に表れているとも考えられる。ただ映画配信については、いまだ十分利用者を獲得できていない可能性もある。

 人々の映画鑑賞行動が変わりつつある中で、映画を取り巻く業界は今後どのように変わっていくのだろうか。興味深いところである。
                  


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連載・映画館 新時代
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
かなり映画館に行く方である。最近はライブビューイングも体感したりしている。映画館の新しい取り組みについては、関連リンクの連載をぜひお読み下さい。

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