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切っても燃えない!折り曲げOKなリチウム電池のすごさ

APBが三洋化成と共同開発、すべて樹脂化で高い安全性
切っても燃えない!折り曲げOKなリチウム電池のすごさ

APBと三洋化成が開発した全樹脂型LiBのセル(右)と、同LiBパック(左)

 電池開発ベンチャーのAPB(東京都港区)は三洋化成工業と共同で、ハサミで切っても、ドリルで穴を開けても発火せず、折り曲げも可能な平板状の「全樹脂型リチウムイオン電池(LiB)セル」を開発した。三洋化成の化成品技術を用い、電極、集電体、セパレーターなどをすべて樹脂化し、安全性を高めた。2021年に量産を目指す。

 開発した全樹脂型LiBは、既存電池パック内の容積の65%を占める端子部品とセル間の隙間が要らず、高容量化できる。一部が短絡しても電流が一点に集中せず、発熱しない。端子不要で重ねるだけで直列接続でき、エネルギー密度も高い。

 構造もシンプルにしており、設備費と時間がかかる乾燥工程が不要。既存LiBと比べ「エネルギー密度は2―3倍にでき、生産性は約15倍に高められる」(堀江社長)。

 量産時の製造ラインは、湿布剤を作るような手法・速度で、電池セル、電池パックを自動生産するラインを構想している。樹脂成形技術の応用で、多様な製品に蓄電機能も付加できるという。まず日本で初期量産を計画する。

 試作の単セルはA4サイズで厚み約2ミリメートル、平均電圧3・7ボルト。畳1畳ほどの大きさにもできる。

 APBは日産自動車で電気自動車用LiBの開発を主導した堀江社長(慶応義塾大学特任教授)が、全樹脂型LiBの量産を目指し18年に立ち上げたベンチャー企業。すでに慶大のベンチャーキャピタルと三洋化成が出資しており、金融機関や素材メーカー、ゼネコンなどにも参画を呼びかけている。

 電力会社向け大型蓄電池などの既存電池代替のほか、ディスプレーの背面、ロボットの筐(きょう)体、壁面への埋め込みなど、形状の自由度が高い特徴を生かした用途向けに提案活動を始めている。

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