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パナソニックのテレビ、買わずに月額4600円はお得なの?

近くの系列店が無料で修理、顧客とつながり新しい価値提供
 パナソニックは一部のテレビで月額制を始めた。利用中は近くの系列店が無料で修理し、数年に一度、新製品に交換するサービスを提供する。利用者はインターネット会員にも登録してもらう。売り切り型ではなく、実店舗とインターネットの双方から顧客とつながり、よりよいサービスを提供し続ける。こうしたビジネスモデルを家電で実現したい考えだ。

 月額制は期間が3年と5年の二つのプランがあり、3年、5年でテレビが最新のものに交換される。プランを継続せず、残価を支払って同じテレビを使い続けることもできる。

 55インチの4K有機ELテレビ(消費税込みの現金価格は31万7196円)の場合、月額利用金額は3年プランで7200円、5年プランで4600円。コンシューマーマーケティングジャパン本部の窪田繁男本部長付主幹によると「3年を選ぶ利用者の方が多い」という。テレビは2―3年で性能が大きく向上する。より頻繁に最新の製品に更新されるプランが支持されている。

 月額制では同社の系列店「パナソニックショップ」が、無料の修理と最新テレビへの交換を担う。系列店はこうして利用者の自宅を訪問することで、顧客接点を持つ。いずれは家族構成や生活ステージに合わせ、冷蔵庫などの買い替えを提案するといった「囲い込み」型の商売に発展するきっかけとなる。

 また利用者にはネット会員「クラブパナソニック」に加入してもらう。パナソニックは家電ごとにばらばらだった会員データを、同サイト上のデータベースで統合ずみだ。今後は会員が増えれば、家電の使用動向などのデータが集約され、マーケティングに生かせる。こうしてネット側からも、顧客の生活習慣やライフステージの変化を把握し、家電の適切な使い方やオススメの製品を発信できないか検討していく。

 パナソニックはテレビやエアコン、洗濯機、冷蔵庫など数多くの家電で国内シェア1、2位にある。ただ、テレビの買い替え時に自社製を引き続き購入してもらえる「リピート率」は4割。同社は月額制を軸に、「リピート率を8割に引き上げたい」(窪田主幹)という目標を掲げる。販売後も顧客とつながって適切なサービスを提供し続けることは、モノが飽和する時代に欠かせなくなりつつある。

 ただ、BツーC(対消費者)商品の家電は、家電量販店などの小売店舗を介して最終消費者に届く。そのためBツーB(企業間)商材と比べ、顧客と直につながるのが実は難しい。この点、全社的なビジネス改革を主導する馬場渉ビジネスイノベーション本部長も、「系列店は過去から顧客と深くつながり、適切な時期に照明の交換を促してきた」と注目する。

 今も系列店は全国に約1万6500店舗存在する。ネット会員も1000万人を超える。日本の総合家電メーカーとして有数の充実したネットワークを持つ強みを生かし、顧客とのつながりを強化する。
系列販売店が修理やテレビの交換などを担う(大阪市中央区のパナソニックショップ)

(文=大阪支社・平岡乾)
日刊工業新聞2019年3月8日

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