「2045年に人工知能が人間を超える」説は本当か?

その時に向けた動きが活発に

 「コンピューターが人間の知性を超えるのはまだまだ先」との声がある一方、その実現と未来に向けた動きは出始めている。総務省は情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)の技術進歩が社会に与える影響や、その対策についての検討会を発足。さらに人間の脳を参考にして、複数の機能を同時に満たす人間並みのAIを目指す研究も進む。”その時“に向けた機運は高まりつつある。

 未来科学者が提唱したシンギュラリティ
 2月、総務省で「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会」が発足した。その発端は、未来科学者のレイ・カーツワイル氏が提唱した「シンギュラリティ(技術的特異点)」。2045年にはコンピューターの能力が人間を超え、技術開発と進化の主役が人間からコンピューターに移る、とする説だ。研究会は45年を前に、社会の変化や日本の国際競争力のあり方を展望し、課題を整理して今後の取り組みを提言することを目的とした。

 6月に提出された報告書では、AI、インターネット、ビッグデータといった「インテリジェントICT」は、さまざまな領域で人間を支援し、生活や仕事、価値観を変えていくと展望。インテリジェントICTを使いこなすための取り組みを早急に始めるべきだ―とした。そのためにも国家戦略レベルで開発・導入を進め、インテリジェントICTを前提とした社会・経済への移行を加速すべきと結論づけている。

 シンギュラリティーについては「部分的には人間の能力を超えるものの、45年の時点では実現されない。しかしより長期に見れば人間を超えるAIができる可能性がある」との見方を示す。

 「20―30年に人の言語や常識が分かるレベル目指す」(ドワンゴ・山川氏)
 人の脳に近いAIの構築に向けた研究も進む。「20―30年に人の言語や常識が分かるレベルのAIの実現を目指す」と話すのは、ドワンゴ人工知能研究所の山川宏所長だ。山川所長は人間の脳の各器官を機械学習で開発し、それらを統合して脳に近づける「全脳アーキテクチャ」を提唱する1人。脳科学者らと研究を進めている。

 現状のAIは画像認識や音声認識など、それぞれの機能に特化した「特化型AI」が主流。対して山川所長らが目指す「汎用AI」は、さまざまな経験から未知の問題にも対応できるような”ジェネラリスト型“のAIだ。

 特化型AIの発達で、できることは飛躍的に広がった。ただ「例えば自動運転車で目の前に紙が飛んできたら踏んでも大丈夫だが、ネコが飛び出したらダメ、といった判別をするには汎用型AIが必要になる」(山川所長)。今後さまざまなロボットが登場し、加えてIoT(モノのインターネット)の普及であらゆるモノがセンサー化するようになると、より複雑な設計が必要。「ここに汎用AIが役立てる」(同)。

 今後もコンピューターの計算能力は上がり、より創造的な仕事ができるAIの登場も未来の話ではなくなった。人間は進化するAIとどう共存していくのか。議論はさらに深まりそうだ。

日刊工業新聞2015年08月10日 モノづくり面

政年 佐貴惠

政年 佐貴惠
08月10日
この記事のファシリテーター

日刊工業新聞で始まった人工知能をテーマにした連載の第2回です。来週以降は、実際の産業活用例を紹介します。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。