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変調中国市場-それでも日系電子部品メーカーの快進撃は止まらない!

スマホの高機能化がけん引「下期にかけてむしろ当初計画を上回るペースで需要が伸びている」(東光)
 中国の景気減速を尻目に、電子部品メーカーの快進撃は止まらない。大手4社が先月末までに発表した15年4―6月期連結決算はスマートフォン向けがけん引し、全社が増収増益。村田製作所は売上高、各利益段階で4―6月期として過去最高を更新した。中国スマホの高機能化が進み、性能に優れる日本メーカーの部品へのニーズが高まっていることが背景にある。
 
 日本の部品メーカーの中国スマホメーカー向けの受注は足元も旺盛だ。「今のところ大きな変動は見当たらない」(山西哲司TDK執行役員)、「下期にかけてむしろ当初計画を上回るペースで需要が伸びている」(早川悦生東光取締役)と口をそろえる。

 中国スマホを巡っては販売台数の伸びは鈍化しているものの、高速無線通信「LTE」対応をはじめ高機能化が急速に進展。特に中級機種をメーンに手がけてきたメーカー同士の競争が激化しており差別化を図るため高機能化を進める動きが活発化している。

 高機能化に向けては積層セラミックコンデンサーをはじめ日系勢が得意とする小型・高性能な中核部品が欠かせない。最近では高精度にカメラのピントを合わせられるアクチュエーターの採用も広がっている。アクチュエーターでは、日系勢が圧倒的なシェアを握っており、「総じて日系各社の存在感が高まっている」(部品メーカー首脳)。

 また、中国スマホメーカーが東南アジアやインド、南米に触手を伸ばし、スマホビジネスを拡大していることも見逃せない。藤田能孝村田製作所副社長は「中国国内だけでなく、海外の通信規格にも対応できるマルチモード端末を手がける動きが活発化している」と指摘。特定の周波数を取り出す表面弾性波フィルターなどの搭載点数が伸びている。

 こうした流れがスマホ1台当たりの部品搭載数の増加につながり、日系勢の部品需要を強力に押し上げている要因になっている。中国市場を見るだけではスマホビジネスを語れない状況だ。

 下期以降は米アップルや中国スマホから新モデルが続々と投入される。部品メーカーは安定供給に向けた生産準備を進めている。ただ中国では株価下落などを受け、欧米の高級ブランドの販売不振が広がっている。仮にスマホ市場でも高級機種の売れ行きが急激に落ち込むようなことがあれば、日本の部品メーカーの業績に直撃する。
 (文=下氏香菜子、尾本憲由)

 ※日刊工業新聞では「変調中国市場」を連載中
日刊工業新聞2015年08月07日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
フォーキャストの精度は以前に比べ格段に上がっているので、在庫が積み上がるというヘマはないだろう。中国スマホもいずれ調整局面が来るだろうが、日本の部品メーカーは今の本質的な強さを維持している限り、慌てる必要はない。

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