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トヨタ、あえて2位予想?今年の世界販売計画をVWより2万台低く公表

「1012万台」1月時点より微減。4年ぶりに首位の座を明け渡すのか
トヨタ、あえて2位予想?今年の世界販売計画をVWより2万台低く公表

左は決算発表する大竹常務役員

 トヨタ自動車は4日、2015年(1−12月)の世界販売台数(ダイハツ工業日野自動車を含む)を、1月公表計画比0・3%減の1012万台(前年同期比1・1%減)に設定した。ライバルの独フォルクスワーゲン(VW)は15年の販売台数について、14年と同水準(1014万台)となる見通しを示している。両社の予想通りにいけば、トヨタは暦年で4年ぶりに世界首位の座を明け渡すことになる。

 国内販売は同1・7%増の214万台(同7・8%減)と上方修正した。日本市場は「除軽市場が堅調」(大竹哲也常務役員)で、当初計画より上向く見通し。

 一方、海外販売は同0・8%減の799万台(同1・0%増)と下方修正した。好調な市場環境の北米で販売を伸ばす一方、景気悪化が続き競争も激化している東南アジアなどでの苦戦が響く。

 ただVWも下期の見通しは不透明だ。依存度の高い中国での販売落ち込みのほか、ブラジルなど高いシェアを誇る新興国での不振が足を引っ張る。

 VWは当初は年間販売計画について緩やかな増加を見込んでいたが、7月には前年と同水準とトーンダウンした。15年年間での首位争いは予断を許さない状況だ。
 

16年の世界生産は31万台増の932万台を見込む。海外伸び、国内も上方修正へ


 トヨタ自動車は2016年(1―12月)の世界生産台数(ダイハツ工業・日野自動車を除く)を、15年計画比31万台増の932万台に設定した。4日、主要部品メーカーに伝えた。海外生産が同24万台増の604万台と伸長する。ただ1月に主要部品メーカーに伝えた計画と比べると、世界生産台数は8万台減と下方修正した。
 
 トヨタは公式発表とは別に主要部品メーカーに生産・販売計画を通達している。市場が堅調に推移している北米では、15年に引き続き16年も好調な見通しで、生産台数は200万台超のペースを維持する計画だ。一方で、1月時点の数字と比べるとアジア・中近東などは、計画を下方修正した。市場回復が遅れている影響が残るとみられる。
 
 16年の国内生産は15年計画比7万台増の328万台を計画している。1月時点の数字と比べると7万台増と、わずかながら上方修正した。国内生産のうち海外向けが同9万台増の186万台。円安も背景に輸出が増える見通しだ。国内向けは同2万台減の142万台と弱含みでみている。

 【中国・天津に新ライン−18年稼働、年産能力10万台】
 トヨタ自動車は4日、中国・天津市の工場に新ラインを設置、2018年半ばに稼働すると発表した。年産能力は10万台で新型車を生産する。投資額は約590億円。中国・第一汽車との合弁会社である天津一汽トヨタ自動車の工場に設置する。既存の老朽化したラインでの生産を17年末までに打ち切るため、天津工場全体での年産能力は現状並みの51万台となる。競争力の高い新ラインに切り替えて、生産効率を上げる。
 
 新ラインは天津市経済技術開発区の三つ目のラインとなる。需要変動に柔軟に対応できように新たに開発した伸縮自在ラインを導入する。一方で、天津市西青区にある老朽化した第1ラインの生産を打ち切る。天津一汽では現在、高級車「クラウン」や小型車「カローラ」「ヴィオス」などを生産している。
 
 トヨタは4月に、従来の新工場建設凍結を解除し、メキシコと中国・広州市での新工場計画を発表した。メキシコでは19年に年産能力20万台の新工場を稼働し、小型車「カローラ」を生産する。広州市では17年をめどに同10万台の新ラインを稼働する。中国では新工場建設に加え、老朽化した工場を刷新し、全体の競争力を高めていく。
日刊工業新聞2015年08月05日 3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
販売台数予想は特にメッセージ性の強いもの。トヨタはGMと世界1位の座を争った時もあえてトップに立たない戦略を持っていた。ただそれは米国のメーカー、米製造業の象徴だったという側面も多分にある。VWとの争いはそこまで気を遣う必要はないが、豊田章男社長の言動をみていると、数字は結果論で、無謀な“チャレンジ”はしないだろう。

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