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経団連会長「デジタル化の波、すべての改革が進む話し合いの年になる」

「経営者の責任は重い。従業員も仕事の質を変えなければならない」
経団連会長「デジタル化の波、すべての改革が進む話し合いの年になる」

中西宏明会長

 経団連の中西宏明会長は日刊工業新聞などのインタビューに応じ、ポスト平成を迎える2019年は「人口減少という深刻な事態に直面するが、安定した経済成長を再び成長軌道に乗せていく大きなチャンス」との見方を示し、「デジタル化の波を経済成長の力にする。動きは急だが、真正面から受け止めるには構造改革が必須だ」と強調した。政府と経済界が「一生懸命議論する仕掛け作りをしなければならない」と述べた。

 中西会長は平成を振り返り、優勝劣敗が鮮明になった電機業界を例に挙げ「従来型の産業構造が変わった。低成長の時期を抜け出し、新たな世代の方向が見えたところで平成が終わる」と総括。

 今後について「デジタルトランスフォーメーション(DX)は逃れられない大きな波。どれだけ吸収し、競争力のある産業構造に転換できるか。経営者の責任は重い。従業員も仕事の質を変えなければならない」と断言。雇用体系を含め「すべての改革が進む話し合いの年になる」とした。

 19年10月の消費税増税については、財政健全化に必要との認識を示し「やらざるを得ないしやるべきだ。経済界としても全面的に協力する」と述べた。

 一方、米中貿易戦争をはじめ自国優先主義がまん延する中「経済のブロック化が発生する恐れがある」と懸念を表明。日本は自由貿易の旗手として「政治と経済がベクトルを合わせてメッセージを強力に発信していく」必要性を訴えた。

 激変する国際情勢に対し、「経営者は柔軟なサプライチェーンの構築に向けて真剣に手を打つだろう」と予測した。その上で「課題は中小企業だ。いろいろな形でデジタル化の波を受ける」とし、経団連としても「(IT化などを)大きく呼びかけてうまく経営戦略に埋め込める活動を進めたい」とした。

 また経済活性化に向けて、日本独自のベンチャー・エコシステムの重要性を指摘し「経団連としても非常に関心がある」と明言。「日本は終身雇用制度が長く続いた結果、大企業に良い人材が集まりがち。大企業がもう少しヒト、モノ、カネ、メンター(指導者)に手を回す仕組みが必要だ」と述べた。

 加えて「官民ファンドがうまく機能していけるように何ができるか議論し、経済界と官の役割分担を良く設計していく必要がある」との見方を示した。

 エネルギー問題にも言及。「日本のエネルギーは危機的状況。コストは高く、世界から非難を浴び、再生可能エネルギーはそれほど増やせず、投資は停滞しているのが現状。打破しなければならない。国の基本問題だ」と語り、原子力発電について「(国民に)理解してもらえないと受け入れられない。公開議論を徹底してやるべき年になる」とした。
日刊工業新聞2019年1月1日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
年末に中西さんとお会いする機会がありました。中西経団連が進める「ソサエティ5.0」、その本質は構造改革ができない企業の退場です。その自覚のある重鎮企業の経営者はどれほどいるのだろう…。

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