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設備の整備時期をAIが分析、“予知保全”で検査の負担軽減へ

ナゴヤ保缶化学工業社、悪条件下でも正確にデータ取得
設備の整備時期をAIが分析、“予知保全”で検査の負担軽減へ

AIによる設備予知保全システムの搭載を目指す自社開発のデータロガー

 ナゴヤ保缶化学工業社(名古屋市北区、三口大登社長、052・911・9326)は、空調設備、プラント設備の保全、修理、工事を主力とする。予防保全の需要が高まる中、人工知能(AI)で設備を遠隔から検査するシステムの実用化を目指している。

 故障での設備へのダメージや稼働停止を避けるため、予防保全への関心は高い。同社の三口社長はさらに一歩踏み込み、「整備の最適な時期を特定する“予知保全”を確立し、顧客の保全負担の軽減を目指した」と話す。このため三口社長は2012年から1年間、名古屋工業大学の大学院に在籍し、音と振動を解析して設備を自動診断する技術の開発に取り組んだ。

 予防保全AIシステムの開発は16年からだ。人の五感に頼る検査をコンピューターにさせるためのアルゴリズムを社内で作成した。そして自社の過去50年分の空調設備の熱源機器の保全報告書データのうち、10万件以上をAIシステムに学習させた。電磁波ノイズや高温、振動などの悪環境下で正確に安定してデータを取得する専用ロガーも開発した。

 17年春に3カ月間、顧客先の2機種の空調設備の熱源機器で同AIシステムの実証試験をし、識別率は95%以上だった。チューブ内部の汚れを言い当てるほど信頼性は高かった。実証試験だけでは異常データが少ないため、コンピューター上の模擬実証試験も繰り返し、システムの完成度を高めた。

 今後は、データロガー自体にAIシステムを組み込み、異常データのみを通報するシステムを19年までに仕上げる計画だ。同システムで予防保全は顧客に任せ、自社は設備の省エネや長寿命化を提案するコンサルティングに軸足を移す考えだ。
(文=名古屋編集委員・村国哲也)
日刊工業新聞2018年11月15日

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