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古着をポリエステルに再生、技術が強みのベンチャーが世界へ挑む

日本環境設計、スタートアップW杯の日本代表に
古着をポリエステルに再生、技術が強みのベンチャーが世界へ挑む

トロフィーを持つ日本環境設計の杉山博紀シニアマネージャー

 世界40カ国・地域の代表が競うスタートアップワールドカップ2019年大会の日本代表に、古着を再生してポリエステル原料を生産する日本環境設計(東京都千代田区)が選ばれた。第1回の世界大会で優勝したユニファ(名古屋市中区)に続き、優勝を目指す。日本のスタートアップは海外に比べ少ないと指摘される。世界を目指す場を通じ、数とレベルの向上が求められる。

 5日、都内で開催された日本予選で、優勝者として日本環境設計の名前が呼ばれると、学生やビジネスマンなど多くの観客らは歓声を上げた。

 同社は、協力先の店舗などで古着を回収し、燃料や資源へリサイクルするプロジェクト「BRING」を行っている。設立は2007年。国内の百貨店やアパレル大手などが回収に協力しており、スタートアップとしては成熟した段階だ。数年前には、古着からつくった燃料で、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した車「デロリアン」を走らせて話題になった。

 同社の強みは、古着のポリエステル繊維から石油由来品と同等の高品質なポリエステル原料をつくる技術。北九州響灘工場(北九州市若松区)で再生ポリエステルを生産している。杉山博紀シニアマネージャーは、「特許を取得し、海外企業へライセンス提供したい」と語る。着なくなった服は、世界中のどこにでもある。W杯を追い風に、次のステップで海外展開を目指す。

 審査員を務めた平野洋一郎アステリア社長は、「上位3社は接戦だった。優勝は『世界市場で役に立てる』視点で選ばれた」と話す。平野社長は、第1回から日本予選の審査に携わってきた。「大会へのエントリーが増え、日本のスタートアップも世界を目指す意識が高くなってきた」(平野社長)とみる。

 日本予選に出場した他の9社も、海外展開を視野に入れる。Kotozna(ことつな、東京都港区)は、異なる言語の会員制交流サイト(SNS)間でコミュニケーションするサービスを開発した。例えば、米国人が「フェイスブック メッセンジャー」で送った英語のメッセージを、日本人が「LINE」で日本語で受け取れる。同システムはSNSをつなぐ仕組みの上に機械翻訳技術を搭載。今後、音声会話にも対応する計画だ。

 ライフイズテック(同)は、中学・高校生向けディズニー作品を使ったプログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」などを提供。ドローンビジネスを展開するソニーとZMPの共同出資会社のエアロセンス(同文京区)も出場した。

日刊工業新聞 2018年10月11日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
スタートアップ企業を対象にしたピッチコンテストが増えてきました。その中で、スタートアップW杯は、日本で事業を開始し、次の成長を視野に入れた企業が出場しています。コンテスト以外に、国内でスタートアップを支援する枠組みも増えています。世界規模で成長する企業の誕生が期待されます。

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