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内部通報制度が形骸化、上場企業の利用は年0―5回にとどまる

デロイトトーマツが調査
 デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー(東京都千代田区)がまとめた「企業の不正リスク調査白書」によると、9割以上の企業が内部通報制度や不正防止ポリシーを策定しているにもかかわらず、半数以上の企業で内部通報の平均利用件数が年0―5回にとどまっていることが明らかになった。制度の形骸化とも取れる結果で、「仏作って魂入れずだ」(八田進二青山学院大学名誉教授)と専門家は指摘する。

 調査は上場企業3653社を対象に2018年7月までの不正の実態や対応をアンケートし、303社から回答を得た。過去3年間で「不正事例があった」と回答した企業は46・5%に達し、事案としては横領が最も多く、会計不正、情報漏えい、データ偽装、カルテル・談合、贈収賄などと続いた。

 ほぼすべての企業が企業理念と行動指針を明文化し、8割以上が「不正処罰方針の周知」を「十分・まあ十分」と回答する一方、上位役職者らに対する社内での「問題提起」「問題指摘の奨励」は6割程度にとどまった。

 また不正により強いられる対応費用の想定額は平均8億2600万円にのぼったが、不正防止に向けたコストは平均9900万円と、約10分の1にとどまった。

 八田名誉教授は「不正対応に特効薬は無く、漢方薬のようにじわりと効いてくる。このため企業がなかなか十分な資金を出せていないのではないか」と分析。「コストと捉えず、人材育成と絡めて対策を講じるべきだ」と指摘する。
             
日刊工業新聞2018年10月8日

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