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その日の気温も考慮。町工場の品質の良い「バネ」作り

 フセハツ工業は医療機器から洗濯ばさみまで、あらゆる製品に使われるバネを手がける。中でも手動変速自動車(MT車)のクラッチ向け特殊バネは、年間500万個出荷する主力製品だ。吉村篤社長は「いかに折れないバネを作るか」に腐心し、加工技術を磨く。

 伸線から切断したバネ鋼を、自社仕様の溶接機に固定。両端同士を溶着させてリング状のバネを作る(写真)。その時バネ鋼表面のねじれ癖やリング径の大きさ、溶接機の性能、その日の気温などに応じ、通電量やバネ鋼への押し圧力を最適にする。熟練工の経験が頼りだ。バネを焼き鈍しした後は振動試験、亀裂や歪みの有無を目視で全数検査する。

 特殊バネはエンジンの動力を変速機に伝えるクラッチの一部に使われ、「折れると大事故につながる」。最適な加工条件の割り出しと念入りな検査が、品質の良いバネを生み出す。吉村社長は「40年以上納品できていることがうれしい」と、笑みを浮かべる。
▽社長=吉村篤氏▽所在地=大阪府東大阪市、06・6789・5531▽売上高=約4億3000万円(18年4月期)▽従業員=50人▽設立=50年(昭25)
日刊工業新聞2018年9月4日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
フセハツ工業のウェブサイトを拝見すると「こんなものもネジなのか」という発見があって楽しいです。

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