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将来、味覚をバーチャルに再現し流通させる味覚メディアが普及する

発掘!イグ・ノーベル賞 明治大学・無限電気味ガム
 身近な不思議を突き詰めると、目からうろこな発見がある。研究の面白さを実感する瞬間だ。ただ、多くの人はその奥深さにおののいてしまう。研究者は科学の深淵(しんえん)に率先して飛び込む人種だ。この好奇心が人類に文明を築かせた。イグ・ノーベル賞は人を笑わせ、考えさせる研究を表彰する。そんなイグ・ノーベル賞にふさわしい、好奇心を触発する研究を紹介する。

 将来、甘味や酸味、塩味などをバーチャルに再現して流通させる味覚メディアが普及する。基本5味覚を電気刺激で再現する方法論ができたためだ。電極を口にくわえて舌に電気を流せば、味を抑制したり、増強したりできる。どんなにまずい食物でも、おいしく頂ける日が来るかもしれない。だが電源ケーブルを口から垂らして食べる姿は品がない。

 明治大学の大場直史大学院生と宮下芳明教授らが開発した「無限電気味ガム」は味覚メディアの電源問題を解決した。圧電素子をかんだ力で発電して舌に電気を流す。

 宮下教授は「大きさは板ガム3枚分。電源という根源的な問題を解消した」と胸を張る。かめばかむほどアルミ箔をかんだ味がする。「好きな人はいる味。個人的には心地よくない」。

 次は電子制御を搭載するのが目標だ。「電気刺激をコントロールして、狙った味を出したい」。カメラと動画のように自分のお気に入りの味を配信する時代。デジタルな味見はゼロカロリーだ。母の味は永久に記録され、外食産業は変革、世界の食糧問題にも一石を投じるかもしれない。
日刊工業新聞2018年9月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
子供の頃、今噛んでいるガムの味が永遠に続けばなあと思いながら噛んでいました。

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