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ヤマダ電機に迫るネット通販の脅威、「今のままでは5年後に会社がなくなるかも」

「住」のトータルコーディネート目指す
ヤマダ電機に迫るネット通販の脅威、「今のままでは5年後に会社がなくなるかも」

ヤマダ電機は、住まいに関するワンストップ提案に勝機を見いだす

 ネット通販の脅威が増す中、実店舗の魅力をいかに高めるか―。多くの小売りが抱える課題に対応し、ヤマダ電機が取り組んでいるのが「家電住まいる館」だ。家電をベースに家具やインテリア雑貨を並べ、リフォームに関する相談窓口も設置。「住」に関するトータルコーディネートを目指す。背景にあるのは「今のままでは5年後に会社がなくなるかもしれない」(三嶋恒夫社長)との強い危機感だ。

 7月20日に改装オープンした「家電住まいる館YAMADA港北センター本店」(横浜市都筑区)の一角には、ベッドや色とりどりのカーテンが並ぶ。家電量販店というよりインテリア店のような雰囲気だ。神社一作店長は「30代のファミリー層や60代がターゲット」と意気込む。

 同店は商業施設「ルララこうほく」内にある。2017年11月までニトリが出店していた場所に増床した。

 17年6月に前橋市内で「インテリアリフォームYAMADA」を開いてから1年余り、現在は40店舗が港北センター本店のような、住空間の提案に焦点を当てた作りだ。ただ開始当初の構想に比べると、新業態の展開ペースは速いとはいえない。6月に就任した三嶋社長は「『気づき』があるたび、既に開いた店舗を改装している」と、“品質優先”の姿勢を説明する。

 テレビの販売スペースにはソファを並べ、家でくつろぐシーンを想定しやすくした。雑貨を充実し、カフェを併設するなど、家電量販店の顧客になりづらかった女性の取り込みも目指す。

 家具、生活雑貨領域は「ニトリの独り勝ち」(三嶋社長)。それでも「これからのキーワードは女性」(同)と見て、本格参入を決めた。

 家電は実店舗で商品を確認してネットで購入する「ショールーミング」の対象になりやすい。家電量販業界ではヨドバシカメラが15年に、全店に無料Wi―Fi(ワイファイ)を導入し各種サイトやSNSを閲覧しやすい環境を整えるなど、ネットとの価格競争は避けられないとの認識だ。
日刊工業新聞2018年8月1日
江上佑美子
江上佑美子 Egami Yumiko 科学技術部 記者
店舗従業員にとっては、提案すべき内容が急激に広がるなど、容易ではない部分もある。三嶋社長は「楽しくて何度も行きたくなる店を作る」とし、使い心地の体験や店員の提案といった、リアルならではの価値の提供へ決意をにじませる。

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