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文科省じゃなく経産省が「教育改革」に乗り出す

テクノロジーを活用した「未来の教室」に挑む
文科省じゃなく経産省が「教育改革」に乗り出す

(写真はイメージ=PIXTA)

 イノベーションを生み出す人材をどう育むか―。経済産業省がこんな視点から教育改革に挑んでいる。均質性や自前主義を大前提とする公教育のあり方に一石を投じる施策にはさまざまな課題があるが、低成長時代の日本が世界と伍(ご)していくには避けて通れないテーマだ。

ITや人工知能(AI)の進展は人間の能力の多くを代替できるようになる。そこで問われるのは、一人ひとりの発想力や課題解決力。こうした問題意識で省庁間の縦割りを排し、施策としてどう実現していくかが問われている。

 経産省が普及を目指すのは、ITやAIといった先端技術を取り入れた教育。教育(education)と技術(technology)を掛け合わせ「EdTech(エドテック)」と称される。

 講義動画の配信といった現状のオンライン教育の域を超え、生徒一人ひとりの興味や特性をデータ分析によって把握。好奇心のおもむくまま、一つの分野を追求する知のナビゲーターとして活用したり、これをきっかけに分野横断的な学習プログラムに発展するといった「未来の教室」を構想する。

 主体的に学ぶ姿勢を身につけることで、身近な生活の中にも画期的なアイデアやイノベーションの萌芽(ほうが)を見い出す「改革者予備軍」を輩出する狙いだ。

 「等しく同じ」をよしとする従来の学校教育では、こうした能力は伸ばせない。「1億総活躍社会」とは、すべての人が既存分野で平均的に活躍するにとどまらず、多様な人材が得意とする分野で個性や能力を開花させることを求める時代だ。

 文部科学省は2020年度に実施する大学入試改革で、評価の力点を思考力や判断力、表現力に評価の重点を置く。他方、総務省は教育現場のIT化を見据えインフラ整備を急ぐ。課題の一つである児童・生徒が授業で用いるシステムと、教職員が校務に使うシステムとの安全かつ効率的な連携促進策は一例だ。

 こうした既存施策に「EdTech」の視点が新たに加わり、教室の風景はどう変わるのか。教育の未来が問われている。
日刊工業新聞2018年5月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
6、7月のMETIジャーナルの特集は「教育」です。お楽しみに。

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