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海外でも売れるモンハン、AIでリアルを追求し続ける

カプコンプロデューサー・辻本良三氏インタビュー
海外でも売れるモンハン、AIでリアルを追求し続ける

「モンスターハンターワールド」公式ページより

 カプコンのゲームソフト「モンスターハンター(モンハン)ワールド」が国内外で売り上げを伸ばしている。国内で人気が高いモンハンシリーズだが、同作は海外市場を強く意識し、「プレイステーション4」などテレビとつないでプレイする据え置き機向けに開発した。カプコン史上最高となる790万本を出荷し、2018年3月期の過去最高の営業利益に貢献した。人気の理由と開発の背景を辻本良三プロデューサーに聞いた。

 ―北米や欧州など海外を中心に人気を集めています。
 「海外は自宅でゲームをする環境を整備し、じっくりプレイする人が多い。このため据え置き機向けのモンハンワールドは多くの人にプレイしてもらった。全体の6割を海外で売り上げている」

 ―携帯機では実現できない高画質な映像が特徴の一つです。
 「モンハンの世界観を描くことを重視した。グラフィックを一新して画質を向上し、風景やモンスターの動きをリアルに表現した。モンスターが生息する場所に飛び込んでいくんだというドキドキ感、ワクワク感を味わってほしい」

 ―モンスターの動きには人間の動きを取り入れました。
 「モーションキャプチャーを活用した。モンスターの形状は複雑なので基本的には開発者の手作業で動きを付ける必要がある。今回はモンスターの動作の一部に人の動きを取り入れることで作業量を大幅に軽減でき、コスト削減につながった」

 ―人工知能(AI)を活用し、モンスターのリアルさを追求しました。
 「現実世界の生態系と同様に、ゲーム内でライバル関係にあるモンスターが出会うと縄張り争いが始まって序列の高い方が勝つようにするなど、モンスターの思考精度を高めた。ゲーム内の地形やプレーヤーの状況を基に、次に起こす行動をモンスター自身で判断できるようにした」

 ―今後はパソコンゲーム向けソフトの発売を控えています。
 「海外はPCゲームのユーザーが多いので需要が高い。ユーザーの体験イベントで収集した意見などをゲーム開発に生かし、無料アップデートも実施する。モンハンシリーズの特徴でもあるが、モンハンワールドも息の長いゲームタイトルになるだろう」
カプコンプロデューサー・辻本良三氏
日刊工業新聞2018年5月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
海外市場を見据えて製品展開する理由は「モンハンという知的財産(IP)として考えると次のテーマに進むべき時。挑戦するなら今だと思った」と振り返る。今作は従来のゲームエンジンを大幅改良し、『モンハンワールド特化型』ともいえるエンジンを開発してリアリティーを実現した。こういった遺産を次のゲーム開発にどう生かせるのかが、さらなる成長の鍵を握りそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・大城蕗子)

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