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イオンが人工知能やIoTを活用して目指す「2050年CO2排出ゼロ」への道

脱炭素ビジョンを策定、最新技術を持つ企業と協業
イオンは2050年までに店舗の営業に伴う二酸化炭素(CO2)排出をゼロにする「脱炭素ビジョン2050」をまとめた。最新技術による省エネルギー化の追求と、電気全量の再生可能エネルギー化で実現を目指す。日本の電力使用量の1%を消費するイオンの取り組みは、産業界の省エネ技術開発や再生エネ普及にも大きな影響を与えそうだ。(松木喬)

“環境のイオン”


 「もう一度“環境のイオン”のブランドを築くように」。環境・社会貢献を担当する三宅香イオン執行役は1年前、岡田元也社長からこう指示された。05年に「エコストア」と名付けた店舗を開業するなど、同社は環境問題に積極的に取り組んできた。しかし今は評価軸が変わり、「50年CO2排出ゼロ」を宣言しないと環境先進企業として認められなくなった。

 17年11月、三宅執行役は気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)に参加し、「流れが大きく変わった」と実感した。以前なら厳しい排出削減に企業は消極的だった。しかし、COP会場では欧州企業や米ウォルマートも排出ゼロの“脱炭素”支持を表明していた。「脱炭素ができた企業は成長できる。ゼロへ向かう姿勢が大事。技術が付いてくる」(三宅執行役)と確信した。
50年にCO2ゼロを目指すと宣言する三宅執行役

電力削減カギ


 帰国後、経営会議に「排出ゼロ目標」を提案。岡田社長は「ゼロか」と驚いたが、すぐに理解してもらい50年ビジョンが決まった。イオンは日本全体の年間電力使用量の約1%に相当する74億キロワット時を消費する。脱炭素のカギは電力の削減だ。

 店舗にIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用した最新鋭の省エネ設備を導入する計画だが、「イオンが技術を持っているわけではない。一緒に取り組む企業を募集中」(同)だ。総合スーパーだけでも600店以上ある。イオンと協業する企業にとって店舗が最新技術を試せる実証の場であり、認められると市場にもなる。

 早速、ほしい電気を選んで購入できる新技術を19年度に1000店舗へ設置することを決めた。17年設立のデジタルグリッド(東京都千代田区)の技術で、家庭の太陽光パネルの電気を調達して店舗で活用する。

企業連合に加盟


 また、イオンは事業で使う電気全量の再生エネ化を目指す企業連合「RE100」にも加盟した。日本企業で5社目だ。30年までに4億キロワット時分を発電する太陽光パネルを大型店に設置し、足りない13億6000万キロワット時は外部調達を見込む。「再生エネ市場の活性化の一助となればいい」(同)と語る。国内流通最大手が再生エネ由来電気の大口顧客となれば、再生エネの普及も後押しされる。
50年にCO2排出ゼロを目指す主な日本企業
日刊工業新聞2018年4月12日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
「脱炭素でできた企業は成長できる」のコメントに補足。ESG投資による評価が高まります。排出ゼロは機関投資家にわかりやすいメッセージです。カーボンプライシグが導入されると排出した分だけ課税されるので、企業には負担が増えます。ゼロに向けて努力していればカーボンプライシングによる負担を抑えられます。また、最新技術を持つ企業がイオン店舗で技術実証すれば、それだけイオンの省エネ力が高まります。オープンイノベーションです。

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