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女子パシュートチームに習う“利益を生む速度”

速度概念で認知共有し、業績革新につなげる
 平昌五輪の日本選手活躍には全国民が感動されたであろう。各選手関係者の精励刻苦で獲得した成果に敬意と賛辞を表したい。

 私たちは感動敬意にとどめず組織運営に生かす具体策を見いだすべきで、それを女子パシュート競技に習いたい。個人の実力で勝る相手をチーム力で圧倒した姿には、組織運営と業績向上に役立つことがあると考える。

 定量的に考察するため、パシュート競技タイム=周回距離÷滑走速度の各周回合計、と数式化する。分子は既知にできるが、分母は諸条件で変動する。

 しかし選手スタッフは訓練に基づいて勝てる周回滑走戦略速度を導き、個と和の力で死守したのだろう。それは選手の真に同期した腕脚動作に表れている。

 競技前半で相手チームがリードしても慌てることなく戦略速度で滑走し、五輪新記録ゴールの優勝歓喜でも選手スタッフは「戦略通り」と達観していたように見えた。

 さて組織業績革新に生かす具体策を考える。「利益は意志、キャッシュは事実」に鑑み、利益=売り上げ(キャッシュイン)―コスト(キャッシュアウト)とする。自己統制できるのはコストゆえ、時間微分して「キャッシュアウトフロー速度=期間コスト÷労働時間」と定義する。

 分子は目標利益や予算から決まり、分母は組織全員で認識する就業時間から算出しよう。単位は月や時間よりも分が望ましい。そしてパシュート選手の戦略速度に同期した腕脚動作のように、組織全員でキャッシュフロー速度を認知し、その予実差異の最小化に取り組むのである。

 すなわち、要点は目標達成度合いを速度概念で認知共有する仕組みである。

 その根拠は車運転にもあり、運転中は速度計を頻繁に見るが距離計をほとんど見ない。組織運営でも売り上げコストを距離に見立て時間微分したキャッシュフロー速度の導入は、全員の認知共有を促し組織業績の革新的向上につながると提言したい。
(文=勝田勝義・日本経営士会)
日刊工業新聞2018年3月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
勝田氏によると、詳細は「キャッシュ“ふろ”マネジメント」と称し日本経営士会研究論文集に寄稿しているそうなので、関心のある方はぜひ。

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