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人事の季節、あなたは行き場のない駒なのか意思ある駒なのか

同じ盤の中で動き続けることに固執する必要さえない時代
 将棋の反則の一つに“行き場のない駒”がある。敵陣一段目に歩兵や香車を打つなど、次にその駒を動かす場所がない状態にしてしまうことだ。

 人事の季節。毎年この時期になると、友人の間で「転勤で単身赴任が決まった」や「そちらに戻ることになったので、よろしく」などと連絡が飛び交う。今年はその中に「転職することにした」という連絡が混じり、いささか驚いた。

 厚生労働省が発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は、1・59倍と高水準が続いている。企業の採用意欲は高く、中途採用の対象年齢も拡大していることから、世間では中高年の転職話などもはや珍しいことではない。

 驚いたのは転職する友人が、良くも悪くも1カ所に根を張るタイプに見えていたからだ。聞けば「いまの会社で先のキャリアが想像できない」と言う。若手の台頭、同期の出世、仕事内容のマンネリ化―。次に“行く場所”がなくなる要因に思いを巡らせた。

 人事権を持つ管理職は、将棋でいえば駒を動かす棋士。先を読み、無駄なく駒を生かす必要がある。一方で将棋と異なるのは駒にも意思があることである。どこを目指すかは自由。同じ盤の中で動き続けることに固執する必要さえない時代だ。
日刊工業新聞2018年3月26日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分は一度も転職経験がない。転職はあくまでその人の意思。ただ社内での異動にしろ、新しい会社での仕事にしろ、そこで自分が何を達成できると喜びを感じられるか、自分の本質を考え咀嚼し意思を昇華させていくしかない。

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