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太陽電池用シリコン薄膜、10倍速で作製

東工大と早大が新技術
 東京工業大学物質理工学院の伊原学教授と早稲田大学理工学術院の野田優教授らは、シリコンウエハー級の高品質な太陽電池用シリコン薄膜を、従来の10倍以上の速度で作製することに成功した。新技術で単結晶シリコン薄膜を製造すると、原料収率をほぼ100%にできた。高い発電効率を維持したまま、製造コストを低減できる。

 研究グループは線状に加熱しながら走査して表面のみを構造変化させる、独自の「ゾーンヒーティング再結晶化法」(ZHR法)を使い表面の粗さを抑えた下地基板表面で、シリコンを成長させた。条件を変えながら基板の表面粗さを制御したところ、結晶欠陥密度を従来の10分の1程度に低減できた。

 基板でのシリコン成長には、シリコンを通電加熱で蒸発させる物理蒸着で、シリコンの蒸気圧を高めた急速蒸着法(RVD)法を適用。毎分10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のシリコン堆積を達成した。

 下地のシリコン基板は再利用でき、薄膜成長用の蒸発源にも使える。一般的な化学蒸着法の製膜速度は、毎時数マイクロメートル、原料収率は10%程度だった。今後、新手法による薄膜を使い、実際に太陽電池を製作する。
日刊工業新聞2018年3月22日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
また、30%を超える変換効率が期待されるタンデム型太陽電池で、低コストなボトムセルとしての利用を目指すという。

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