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ソニーやキヤノンが本気になるネットワークカメラ市場のポテンシャル

監視用途は年率20%成長。ソニーは初の「4K」、キヤノンは過去最大の買収劇で販路を確保へ
ソニーやキヤノンが本気になるネットワークカメラ市場のポテンシャル

ソニーの4Kネットワークカメラ

 ソニーは2日、フルハイビジョン(HD)の4倍の解像度を持つ「4K」映像に対応する同社初のネットワークカメラ「SNC―VM772R」を、8月20日に発売すると発表した。フルHDより1・5倍先にいる人の顔を認識できるほか、夜の暗い場所でも対象物を鮮明に映し出せる。市街地や駅などで監視用途を見込む。

 必要な部分や動く対象物だけを4K映像で記録し、それ以外の部分は解像度を下げる機能を搭載。データ量を最大で半減でき、伝送コストを下げられる。高性能デジタルカメラに使っている1型の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサーを採用し感度を高めた。0・06ルクスの暗さに対応。価格は35万8000円(消費税抜き)。

世界最大手を買収したキヤノンの勝算


 キヤノンのネットワークカメラ事業をめぐる動きが活発化してきた。監視カメラなどネットワークカメラ世界最大手であるスウェーデンのアクシス買収を筆頭に、自社製品ラインアップの大幅拡充や国内生産に着手した。御手洗冨士夫会長兼社長は「既存事業に次ぐ収益の柱になりうる」と位置付け、現状で最も力を入れる。飛躍に向けて着実に布石を打っている。

 「アクシスに期待するのは販売網。キヤノンのトップクラスの光学技術と合わせれば、相当な強みを出せる」。御手洗会長兼社長は、過去最大となる約3300億円の買収成果に自信をみせる。2月に買収を発表したアクシスへの株式公開買い付け(TOB)が8日に完了した。3回にわたるTOBで計84・05%の株式を取得。投資ファンドのエリオット・マネジメントが一部の株を保有していたこともあり、当初目指していた完全子会社化には至らなかった。

 しかし、田中稔三副社長は「子会社化したもののアクシスは独立して動いている。必ずしも100%(の完全子会社)でなければシナジーが出せないわけではない」と説明。今後の追加買い付けや価格の見直しを行わない方針を示した。業績に与える影響などの検討を進めて、上期を終える夏頃に方向性を示す見通しだ。

 今後は、キヤノンとアクシスがそれぞれ抱える既存の販売チャンネルをどう融合するのか、生産体制をどう構築するのか、といった点が焦点になる。本格的な買収の効果が出てくるのは「2016年以降になる」(御手洗会長兼社長)と見通しており、来期以降につなげる構えだ。
 
 一方でキヤノンは国内で、ネットワークカメラの生産体制を整えつつある。ネットカメラの上位機種を、コンパクトデジタルカメラの生産拠点である長崎キヤノン(長崎県波佐見町)で製造することを決めた。同社の島貫智則社長は「デジカメで培ってきた生産ノウハウを生かせ、日本の開発部門とも連携を取りやすい」と強みを説明。「長崎から全世界に高機能ネットワークカメラを出していく」と意気込む。
 
 アクシスは開発設計を手がけるものの、基本的には工場を持たない「ファブレスメーカー」だ。それだけにキヤノンにとって長崎キヤノンでの生産開始は、同分野のモノづくりノウハウを積み上げる狙いもありそうだ。
 
 将来はアクシスブランドの製品も手がけることを視野に入れていると見られる。キヤノンでネットワークカメラ事業を担当する山田昌敬取締役NVS事業推進本部長は「アクシスブランド品を生産するかどうかは未定」とする。ただ「シナジーを出せる方法で、グループにとって最も効率的なやり方を探る」と、検討を進める方針だ。
 
 防犯のため監視などに使われるネットワークカメラの市場は、年率20%で伸びており20年には2兆円規模になると予測される成長分野だ。特に工場といった産業分野や河川など自然災害の監視向けで、利用が期待される。

 キヤノンも暗い場所で鮮明な画像を撮影できるといったデジカメで培った技術などを基に、これらの分野に向けた新製品を大幅に拡充した。キヤノンの「新たな稼ぎ頭」が育つ環境は整いつつある。巨額の資金を投じたアクシスの活用法と、その効果を目に見える形で表せるか。生産でモノのインターネット(IoT)手法の活用を模索する産業分野や、インフラ監視といった公共分野にどう食い込むか。具体策が今後、問われることになる。
2015年05月19日 /07月03日電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ビッグデータIoT関連の有力デバイスであるネットワークカメラ。屋外だけでなく家庭用もスーマートホームにおけるカギになる。グーグルがネストを買収し、得意のプラットフォーム化を狙っているが、日本勢はやはりハードウェアで勝負していくのか、、。エコシステム化していくことで、産業用も家庭用も垣根は低くなっていくはず。

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