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「swatch」は時計なのかファッションなのか

成熟カテゴリーからの脱出法
「swatch」は時計なのかファッションなのか

本来の商品とは異なる枠組みを消費者へ提示したswatc(同社公式ページより)

 近年、消費者の多くが話題にするような新製品や新サービスが少なくなっている。企業は短期的な成果を意識しすぎて、コスト削減や効率化を優先し、新市場の開拓や新製品開発における革新性を低下させているのではないか。

 マーケティングでは「市場志向」と呼ばれる組織の姿勢に注目し、新製品開発の機能や効率の関係について研究が試みられてきた。マーケティングの出発点は顧客志向にあり、顧客を見据えることを新製品開発における基本姿勢とする志向は今日のビジネスの潮流である。

 コモディティー化した市場に新商品を導入し、成功に導くことは大変難しい。

 ハーバード・ビジネススクールのヤンミ・ムン教授の著書「ビジネスで一番、大切のこと」―消費者のこころを学ぶ授業―の中で既存の分類を書き換える「ブレークアウェイ・ブランド戦略」がある。

 ブレークアウェイ・ブランドとは、本来の商品とは異なる枠組みを消費者へ提示し、消費者に違う商品として認識してもらうブランディングである。

 一つの例として、時計という成熟したカテゴリーからファッションというカテゴリーに移住した「スオッチ」がある。

 スイス時計と言えば、最高品質の金属や宝石を使い、細心の注意を払って作られ、最も高級な宝飾店で販売される商品である。「スオッチ」生みの親にして、スイス時計産業の救世主が、ニコラス・ハイエックである。「日常のファッションクセサリー」という別のカテゴリーを打ち出した、それが「スオッチ」だ。

 時計業界が見たことがない消費行動を示し始め、洋服やその日の気分で使い分けるために、いくつも購入した。時計に興味を示さなかった顧客も買い始めた。

 1983年に発売されたブレークアウェイ・ブランドは、現在まで非常によく売れており、自ら切り開いたファッションウオッチというカテゴリーに君臨し続けている。

 ブレークアウェイ・ブランドでは、異なる市場の製品や機能を取り込むことによって、当該製品は従来の市場から抜け出して、新しいカテゴリーを生み出す。

 従来の商品カテゴリー中に新しい商品の枠組み提供することによって新しい市場の開発につながる。
(文=上野延城・日本経営士会)
日刊工業新聞2018年2月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分は昔から時計をしない。ケータイが出てきてからスマホが時計変わりになった。現状、スマホに置き換えられるものは、より嗜好性か高機能に寄せていかざるをえない。

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