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“大量廃棄時代”に備えよ!思考停止の太陽光パネルリサイクル

三菱ケミカル傘下の新菱が準備、パネルの封止材を熱分解する炉を設置
 三菱ケミカル傘下の新菱(北九州市八幡西区、江藤俊郎社長、093・643・2777)は2019年から太陽光発電パネルのリサイクル処理事業に乗り出す。パネルの封止材を熱分解する炉などを設置して高リサイクル率の手法で参入する。太陽光の国内導入は急増しているが、製品寿命後のパネル廃棄問題が懸念される。ピークの40年頃に産業廃棄物処分量全体の6%を占めるとの予測もあり“大量廃棄時代”に備えた社会システムの構築が求められる。

 新菱は三菱ケミカル・黒崎事業所(北九州市八幡西区)の自社工場に設備を導入して、太陽光発電パネルのリサイクル処理事業へ参入する。シリコン系と銅・インジウム・セレン(CIS)系の製品に対応する。

 シリコン系の場合は廃棄パネルのアルミ枠を解体、バックシートも除去した後に、炉で封止材のエチレンビニルアセテート樹脂を熱処理してガラスやセル、銅線を回収する。リサイクル率は95%で、他の手法だとガラスなどを破壊しないといけないという。

 まず設置する炉は試験的な設備で、最大年6万枚程度の処理能力を持つ。同じく新規事業の炭素繊維リサイクルと共用してコストを抑える。ただ、将来は同12万枚を処理できる本格的な炉の導入を検討する。

 同社は事業許可を得る19年からリサイクル事業を計画する。先行して、18年は廃棄パネルの再利用事業を始める。引き取った製品に洗浄などの処理をして中古業者へ販売する。

 太陽光発電パネルの廃棄量は30年前後から急増し、40年頃には年約80万トンの排出が見込まれている。将来大きな社会問題となる可能性がある。
月内に三菱ケミカル・黒崎事業所内の工場に炉を設置して事業の準備を急ぐ
日刊工業新聞2018年2月9日
鈴木岳志
鈴木岳志 Suzuki Takeshi 編集局第一産業部 編集委員
 2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)開始後は太陽光発電パネルの国内導入が急増している。賦課金などの『入り口』問題がよく注目されるが、『出口』である廃棄パネル問題に対する社会的関心はまだ高くない。20-30年の製品寿命を考えると、早ければ2030年頃から排出量が急激に拡大する見通し。30年以降の話と官民ともに思考停止し、現実味や当事者意識が希薄な面も否めない。出口戦略に対する議論の本格化が待たれるところだ。

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