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「MRJ」キャンセル連鎖を避ける焦点

トラブル避け、開発を仕上げることを最優先
「MRJ」キャンセル連鎖を避ける焦点

昨年のパリ国際航空ショーでは初めて実機展示したが…

 三菱重工業傘下の三菱航空機と米イースタン航空は、開発中の国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)の購入契約40機(オプション契約含む)をキャンセルすることで合意した。イースタン航空が買収されたことに伴い航空事業から撤退するための措置で、MRJの契約キャンセルは初めてだ。三菱航空機の水谷久和社長は「(キャンセルは)MRJの開発状況や性能ではなく、イースタン側に起因する結果と受け止めるべきだ」と冷静。果たしてキャンセルは続くのか。

 現在、試験飛行の時間は1500時間まで到達した。ただ、型式証明の審査を受けられる状態にはなっていない。設計見直しがため、どれほどの試験時間で完了すると言える状態ではない。追加する試験機の機数は今後詰めるという。

 17年秋としていた設計見直の完了も、年内ぎりぎりになるかもしれない。装備品の配置、電線の配線と大きく二つの見直し作業があり、装備品については終わった。電線はめどは立ったが、詳細な作業をしている段階だ。今年の大きな課題は、設計見直しを完全に仕上げ、それを反映した機体を作り上げることになる。

 量産初号機を目標の20年半ばに納入について水谷社長は「ぎりぎりいけると思っている。ほぼ計画に沿って動いている。型式証明取得に向け飛行試験を進めることが、将来の注文につながるはずだ。開発を仕上げることが優先で、積極的に受注を取ろうとはしていない」と話す。

 米イースタン航空の件は顧客側の事情によるものが大きいが、キャンセル発生で受注活動に悪影響が出る可能性もある。今後、試験機を計画通り追加投入できるかが大きなポイント。納期を守るためにも、これ以上のトラブルは避けたい。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
度重なる延期の間に、発注者の経営環境が変化したことが、キャンセルを招いた側面はある。競合のブラジル・エンブラエルと米ボーイングとの提携が決まれば、受注競争はさらに厳しくなる。20年半ばの納期の死守が求められる。 (日刊工業新聞名古屋支社・戸村智幸)

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