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グーグル主催の月面探査レース、勝者不在で終了。日本チームHAKUTOを振り返る

グーグル主催の月面探査レース、勝者不在で終了。日本チームHAKUTOを振り返る

ローバー開発の現場。右は袴田社長

 米グーグルがスポンサーの国際的な月面探査レースを主催する米Xプライズ財団は23日、期限である3月末までに探査車を月面に到達させるチームが存在せず、レースを終了する見通しであると発表した。同レースには日本から民間月面探査チーム「HAKUTO」(ハクト)が参加している。同財団に期限の延長を要望していたが、聞き入れられなかった。賞金総額3000万ドル(約33億円)を賭けたレースは、勝者なしで打ち切られる。

 ハクトを運営する宇宙ベンチャーのispace(アイスペース、東京都港区)は、「月面探査車を3月末までに月に送ることは難しい」と11日に発表していたが、同社の袴田武史最高経営責任者は「延長できなかったとしても、月に探査車を送る挑戦は続けたい」と語っていた。

日刊工業新聞2018年1月25日



2015年には月面探査レースの中間賞獲得


 2015年1月、月面に無人機を送り込む国際探査レースに、日本から唯一参戦している民間チーム「HAKUTO(ハクト)」が、同レースを主催する財団から開発資金援助を受けられる賞に選ばれた。獲得資金は50万ドル(約6000万円)。米宇宙開発ベンチャーと連携して2016年末までにハクトが開発した探査車をロケットで打ち上げる。

 同レース「グーグル・ルナ・エックスプライズ」は米グーグルがスポンサーで、賞金総額は3000万ドル(約35億円)。各国18チームが参戦している。巨額の費用がかかる開発や打ち上げの経済的支援のために「中間賞」(賞金総額525万ドル)が設けられ、5チームを選定。ハクトは50万ドルの資金を獲得した。

 ハクトには、小惑星探査機「はやぶさ2」の開発などに携わった宇宙ロボットの第一人者、吉田和哉東北大大学院教授らが参加。ハクトが開発する探査車は4輪の本体と2輪の子機をロープでつなぐ構造。14年12月、本体が約45分かけて百数十メートルを完走し、子機が急斜面での走行実験に成功している。

 本戦のレースでは月面を500メートル以上走行。高解像度の動画や静止画データなどを地球へ送信すれば、賞金が贈られる。

日刊工業新聞2015年02月24日 科学技術・大学面の記事に一部加筆修正



2016年7月には2社がスポンサーに


 KDDIは7日、米グーグル主催のロボット月面探査レースに参戦するプロジェクト「au×HAKUTO MOON CHALLENGE」について、応援するアンバサダーとして女優の有村架純さんやタレントの篠原ともえさんを任命したと発表した。

 同レースは2017年末までに月面にロボット探査機を着陸させて走行させ、画像を地球に送る競技。KDDIは日本チーム「HAKUTO」の無線技術を支援している。

 有村さんは都内の就任式で「(プロジェクトを)皆さんに知ってもらう力になりたい」と意気込んだ。篠原さんは「挑戦当日は望遠鏡で月を眺めたい」と計画を明かした。

女優の有村架純さんとタレントの篠原ともえさん

スズキは開発部門の士気を高める


 スズキは5日、米グーグル主催のロボット月面探査レースに参戦する日本チーム「HAKUTO」に技術支援すると発表した。パウダー状の砂で覆われた月面をスリップせずに走破する技術や軽量化技術を提供する。

 ブランドイメージや技術者の士気向上が狙い。HAKUTOはispace(東京都港区)が運営する日本唯一の参加チーム。2017年末までに月面にロボット探査機を着陸させて500メートル以上移動し、画像データを地球に送るミッション達成を競う。

日刊工業新聞2016年7月5日/8日

昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
2010年からチャレンジしてきたハクトですが、探査機が便乗する予定だったインドチームのロケットの調整がつかず期限内に打ち上げができませんでした。

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