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慶應SFCやアドビが提供、創造的な人材を育む「授業レシピ」とは?

不安抱える生徒や教員、デジタルファブリケーション活用し実践的な学び
慶應SFCやアドビが提供、創造的な人材を育む「授業レシピ」とは?

アドビシステムズ代表取締役社長 佐分利ユージン氏

 慶應義塾大学SFC研究所ファブ地球社会コンソーシアムの高大連携教育ワーキンググループチーム(高大連携WG)が、情報教育を促進させ、創造的人材を育成するための「授業レシピ」の提供を開始した。

 個人の感性と創造性がデジタルファブリケーションによって社会と結びつき、新たな価値を生み出していく「ファブ地球社会」。その実現を担う人材を育成するために発足したのが高大連携WGだ。SFCの教員・教授を中心に、アドビシステムズやヤマハのような企業、奈良県教育委員会で構成されている。

 授業レシピの開発に至った背景には、これからの社会でより必要とされる創造性という能力に対して、生徒や教師が不安を抱えている現状があった。

 アドビが実施した、日・米・英・豪・独の5カ国における12~18歳の生徒とその教師たちを対象にした調査によると、日本の生徒は、自らのことを「創造的」だと捉えている割合が8%で、他国の同世代の平均44%と比べて圧倒的に低いことが分かった。また日本の教員の約7割が、創造的課題解決能力を育成するためのツールや学習機会が学校教育の現場で不足していると回答した。

 この結果を受けて、日本の情報教育をもっと創造的かつ実践的なものに変えていく必要があると認識し、ワーキンググループでの授業レシピ開発が始まったという。

 授業レシピは大学生向けの授業案と、高校生向けのワークショッププログラムの合計二種類。情報通信技術や入手可能なデジタルファブリケーションを活用したアクティブラーニングを基本としていて、実践的な学びで創造的に考える力を育む。

 授業レシピはモノづくりレシピ共有サイト「Fabble」から無料で入手可能だ。Fabbleには、授業レシピをもとに実践されたワークショップの作品事例が蓄積される。

 アドビは授業レシピの開発・検証を主に行うSFCの教員に対する研修会を実施。また、自社のツールを導入している大学や高校に向けて授業レシピの実践を促進していく。

モノづくりレシピ共有サイト「Fabble」
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日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
慶応義塾大学SFC研究所所員の渡辺ゆうか氏は「情報教育はいまだにエクセルやワードの使い方を学ぶだけにとどまっている学校が多い」と言う。この取り組みを通して、こどもたちがワクワクする授業が増えればいいなと思います。 (日刊工業新聞・大森翔平)

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