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日本メーカーの牙城になりつつあるスエード調の人工皮革

東レと旭化成がさらに能力増強へ動く
日本メーカーの牙城になりつつあるスエード調の人工皮革

東レの人工皮革「ウルトラスエード」

 東レは、スエード(起毛)調の人工皮革「ウルトラスエード」の生産設備を増強する。自動車内装材などの堅調な需要に対応する。投資額は約35億円。同製品の前工程を手がける滋賀事業場(大津市)と後工程を担う岐阜工場(岐阜県神戸町)で、設備を増設する。生産能力は現状比約60%増の約1000万平方メートルに引き上げる。2019年9月に新設備を稼働する予定だ。

 ウルトラスエードは東レの独自技術で多彩な商品展開が行われ、新規用途の開拓も進む。車の内装材に加え、近年はスマートフォンのケースカバーやヘッドホン部材などの家電分野(写真)でも需要が拡大している。同製品ともう一つのスエード調人工皮革「アルカンターラ」を合わせた東レの高級人工皮革の世界シェアは5割を占めるという。

 日系合繊メーカーが世界的に強みを発揮している数少ない繊維事業は不織布で、人工皮革もその一つ。とくに、デザインや審美性だけでなく品質や機能性が厳しくチェックされる自動車内装材向けや椅子張りなどで根強い需要がある。

 人工皮革はマイクロファイバーを使い不織布ベースだが、スエードタイプとヌバック(銀面)タイプ、エナメルタイプがあり、量的には銀面タイプが凌駕してきた。

 しかし、最近はスエードタイプが欧米などで中高級車向けカーシートを中心に需要増が目立つ。取り扱いやすさに加え、天然皮革の品不足による価格高騰が背景にあるようだ。

 人工皮革の世界生産能力は年約3億平方メートル強、そのうちの10-20%がスエードタイプと推定される。取り分けスエードタイプは、東レグループと旭化成グループを中心にした日系合繊メーカーが、中高級ゾーンにおいて世界シエアで50%以上を占める。
日刊工業新聞2018年1月17日の記事に加筆
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
東レグループと旭化成グループは今回を含め大幅な生産能力拡大に取り組んでいる。こうした増能力が完了すれば、東レグループは3,000万平方メートル弱、旭化成グループが900万平方メートル、2019年末には2つのグループを合わせると約4,000万平方メートル/年まで強化され、世界シエアも一段とアップすることが予想されます。

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