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拡大するプロジェクションマッピング、でも専門人材が足りない!

イマジカ・ロボットHD、若手クリエイターの発掘の場を提供
拡大するプロジェクションマッピング、でも専門人材が足りない!

16年東京国際プロジェクションマッピングアワード最優秀賞(デジタルハリウッド大学)

 イマジカ・ロボットホールディングスが主力の映像コンテンツ事業を強化している。特に企業向け映像ビジネスを新たな成長領域に設定。傘下のピクス(東京都渋谷区)が同ビジネスの一環として「プロジェクションマッピング」を推進する。プロジェクションマッピングは新たな表現手法として注目されており、企業・地方自治体の広告やイベントで利用が相次いでいる。

 プロジェクションマッピングは建造物をスクリーンとして活用し、プロジェクターで映像コンテンツを投映する映像手法。欧州が発祥と言われる。

 日本では2012年に行われた「TOKYO STATION VISION」から認知され始めた。JR東京駅丸の内駅舎保存・復元工事の完成を祝したイベントで、駅舎の側面にフルコンピューターグラフィックス(CG)映像を投映した。

 このコンテンツ制作を手がけたのが、ピクスだ。その後も、スクウェア・エニックスなど企業のPR活動や自治体の観光客誘致を目的にしたイベントなど、多くのコンテンツを制作している。

 ただ、注目される一方で課題となっているのが、専門人材の不足だ。他のコンテンツと違い、投映する場所の確保が困難であり、気軽に練習することができない。またプロジェクターなど機材が高額で、学生が容易にチャレンジすることも難しい。さらに新しい分野であるため、教育する指導者がほぼいない状況だ。

 そこで同社はグループ会社のイマジカデジタルスケープ(東京都渋谷区)と共同で「東京国際プロジェクションマッピングアワード」を16年から開始した。

 学生を対象にしたプロジェクションマッピング作品のコンテストで、若手クリエイターの発掘とともに育成を兼ねた場となっている。

 イマジカデジタルスケープの早川正祐ゼネラルマネージャーは「自分の作品を投映する環境がない学生らに発表の場を提供したい」という思いから開催に至ったという。

 コンテストには美術や映像、建築に限らず、情報デザイン、工学、理工、生物などさまざまなバックグラウンドを持った学生らが集まっている。

 17年には国内だけでなく、海外からの応募もあった。作品を審査するだけでなく、学生はプロのクリエイターからアドバイスも受けられる。

 ピクスの須澤大助プロデューサーは「アワードを通して学生には学んでもらい、将来は映像界をリードするようなクリエイターに育ってほしい」と期待を込めた。

 ピクスは人材育成を通じてプロジェクションマッピング分野での存在感を一段と高める意向だ。またパナソニックなど他社との連携を通じ、技術の高度化を促進して事業を強化していく。
専門人材を育成(16年東京国際プロジェクションマッピングアワード授賞式)

(文=松沢紗枝)
日刊工業新聞2018年1月16日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
シード・プランニング(東京都文京区)の調べによると、国内のプロジェクションマッピング市場は16年に6400億円だったが、20年には1兆円以上に拡大する見通しだ。その中で、コンテンツ制作などソフト分野が占めるのは、約20%とみられる。今後は20年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて、関連イベントでの利用などで需要が高まると予測される。政府もプロジェクションマッピングを焦点にした屋外広告の規制緩和に乗り出した。これが実現すれば、さらに普及が進みそうだ。 (日刊工業新聞第一産業部・松沢紗枝)

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