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航空機メーカー、トップが語るリスクとチャンス

「777X」けん引、「MRJ」は産みの苦しみ
航空機メーカー、トップが語るリスクとチャンス

ボーイングの次期大型機「777X」

 足元では米ボーイングの大型機「777」の減産が響いているが、20年に初号機納入予定の次期大型機「777X」がけん引役となる。大手重工各社が生産を始めており、サプライヤーへの波及効果が期待される。中大型機「787」の月産数が19年に12機から14機に増えるのも好材料だ。国産小型ジェット旅客機「MRJ」は納入延期による設計変更の影響で、量産段階ではない。

<IHI・満岡次郎社長>


 ―航空機エンジン事業の状況は。
 「大増産に素材メーカーがついてこられない事象も出ている。主要素材は複数購買が基本だが、それでも厳しく、供給能力を高めてもらえるよう協力している。(欧エアバスの『A320neo』向け)『PW1100G―JM』や(米ボーイングの『777X』向け)『GE9X』など、新エンジン向けの設備投資は計画通り。投資計画の変更や見直しは考えていない」

 ―エンジンの修理・整備(MRO)事業では、新拠点の設立を検討しています。
 「当初の計画より早くPW1100G―JM向けの整備体制を立ち上げる必要が出てきた。ただ、新拠点の建設は、いろんな機関と相談しないといけない。まずは瑞穂工場(東京都瑞穂町)で同エンジンのMROを始めた」

<川崎重工業・金花芳則社長>


 ―航空機部門の状況は。
 「(米ボーイングの次世代大型機)『777X』向け機体部品の本格量産が、20年にも立ち上がる。名古屋第一工場内に同機向けの新工場を建設したが、自動化が本当に進んでいる。自社開発した大型のリベット打ちロボットなど、あらゆる工程で人手が介在しない製造ラインを構築。今後はボーイングと生産技術を共有するなど、生産性向上に向けた取り組みを加速する」

<三菱重工業・宮永俊一社長>


 ―生みの苦しみが続く国産小型旅客機「MRJ」の状況は。
 「MRJの設計変更については、配線関係の見直しなどだいだい終わっている。作業自体は順調だ。(初号機の)納期は予断を許さないが、20年度にできると考える。完成機をまとめ上げるのは、企業として究極の挑戦だ。時間はかかるが必ずやり遂げ、日本の産業界に夢のあるものを残したい」
日刊工業新聞2018年1月12日の記事に加筆
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
 世界の航空機産業に地殻変動が起ころうとしている。足元では格安航空会社(LCC)の台頭により、需要は中・大型機から小型機へシフト。小型機で欧エアバスに後れをとる米ボーイングは2017年12月、小型機を得意とするブラジル・エンブラエルとの提携交渉を認めた。ボーイングとエアバスの受注競争が激しさを増す傍ら、中国メーカーも小型機の初飛行に成功。業界の勢力図に変化の兆しが見える。ボーイング向け主要構造部位の供給(ティア1=1次取引先)が中心の日本勢は、今まで以上にコストダウンを求められる可能性もある。

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