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クラウド翻訳の革命児、Gengoが考える次の一手

【世界に誇るテックベンチャー#07】機械翻訳と人力翻訳の組み合わせを
 東京・渋谷を拠点に、クラウドソーシング(ネットを介した不特定多数への業務委託)による翻訳サービスを世界で展開するユニークなベンチャーがある。Gengo(東京都渋谷区)は、翻訳者約2万1000人を抱え、37カ国語に対応。現在は人力で行っている業務に、機械翻訳などを組み合わせた新サービスの開発も視野に入れる。

 JR渋谷駅新南口近くのビルにあるGengoのオフィス。欧米系やアジア系など多彩な顔ぶれが揃い、社員が連れてきた子どもの姿も見られる。オフィスはフィリピンのマニラにもあり、従業員は東京26人、マニラ40人。両拠点の他、米国と欧州にも在宅などで働くリモートスタッフを擁する。

 同社のマシュー・今井・ロメインCEO(38)は米国生まれの日本育ち。米国人の父と日本人の母との間に生まれ、米国北東部、ロンドン、東京といった都市で日本語と英語を使い分けながら生活してきた。

 スタンフォード大学大学院の音楽学部修士課程修了後、オーディオ関連エンジニアとしてソニーに入社。同社を退職後、ウェブ制作会社設立を経て、2008年12月に現在のサービスの基となる「Gengo」を世に送り出した。

 翻訳対象は旅行業、Eコマース、生活・娯楽関連のメディアなど幅広く、大手出版社やアパレルなども同社のクラウド翻訳サービスを利用している。最低文字数や金額といった発注制限はなく、平均3時間以内に翻訳が完了するスピード感が売り。ロメインCEOは「翻訳者を厳選しているので、優秀なスキルを持った人が集まっている」と、品質の高さを強調する。

 今後の事業展開については、クラウドソーシングを活用した新たなサービスも準備しており「会議の録音データの文字起こしなど、新たなサービスをローンチしていきたい」(ロメインCEO)。具体的には会話の音声を元にした文字起こしや新商品の説明などを翻訳するサービスを検討している。

 「翻訳や文字起こしサービスを、機械翻訳と人力翻訳を組み合わせたソリューションとして提供することを考えている」(同)と、人力とテクノロジーを組み合わせていく考えだ。
【会社概要】2008年12月にクラウド型の人力翻訳プラットフォームGengoをローンチ。09年6月に株式会社Gengoを設立し、ロメイン氏は同社CTOを経て2015年3月にCEO就任。

日刊工業新聞2017年12月29日に加筆修正
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
現在は人力による翻訳に特化していますが、実は社内で蓄積した翻訳データを基に機械学習も研究しているそうです。文字起こしでは言語や話題にする分野、文脈によって難易度が変わってきます。この点、さまざまな言語を扱い9年分のデータを蓄積していることが、競争優位性となりそうです。音声データをテキスト化する際のアルゴリズムの精度をいかに上げていくか、スピード勝負の面もあります。

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