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高校生に「上京前」教育、政府がUターン就職を後押し

東京圏の大学に進学する学生を対象、
 政府は、地方から東京圏の大学に進学する高校生のUターン就職を促すため、上京前のキャリア教育を強化する。進学直前に地元経済界や自治体と連携した企業説明会を開くことなどを想定。地元を離れても、就職時に帰って来やすい環境をつくるのが狙いで、具体的な実施時期などを今後詰める。

 政府が策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略2017改訂版」では、東京一極集中の是正に向け、20年までに地方と東京圏の人口流出入を均衡させる目標を設定。地方大学の魅力向上や、東京23区内にある大学の定員抑制などを盛り込んだ。

 一方で、東京圏の大学に進学する生徒が多い地方の高校では、地元の企業や地域課題について知る機会が少なく、就職時にそのまま東京圏に定着して戻らなくなるケースが多いとの指摘もある。

 このため、進学で地元を離れる生徒にもUターンの働き掛けを強め「先手」を打つ。大学入試が一段落し、3月末に上京するまでの時期を活用し、高校での企業説明会やインターンシップ(就業体験)を実施。電子メール登録によって上京後も企業情報が届くようにしたりするなど、学生が地元のネットワークに参加できる場を作りたい考えだ。

 文部科学省関係者は「全国各地の学生が東京に集まり、切磋琢磨(せっさたくま)するのはいいこと。4年間東京で学び、地元に帰る流れにつながれば」としている。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
 上京前にやる意味をほとんど感じないのだが。地方から東京への進学は減少している。文科省の統計では、都内の大学に入学した東京圏(埼玉、千葉、神奈川含む)以外の学生は、2002年が4万5527人で36・4%。しかし16年は4万2998人で29・7%に減った。全国型といわれた有力大学の“東京ローカル化”も進む。東京圏出身の1986年と2016年の合格者割合は、早稲田が約52%が約74%に、慶応は約56%が約73%に急増した。東大も約47%が約55%に増えた。  地方出身者が激減したのは、経済的な側面が大きい。この30年間で私立、国立とも学費が高騰し、都会での一人暮らしはハードルが高くなった。少子化により地元進学を望む保護者が増えたのも一因とみられる。

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