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GEの金属積層造形を主導した男、「手遅れにならないうちに日本も行動を」

GEアディティブのエテシャミ氏インタビュー
 米ゼネラル・エレクトリック(GE)が金属積層造形の分野で存在感を増している。2016年には欧州の装置メーカー2社を買収し、最大1メートルの大型部品が作れる装置も開発した。GEの金属積層造形事業部門GEアディティブでバイスプレジデント(VP)・ゼネラルマネジャーを務めるモハメッド・エテシャミ氏に、金属積層に力を入れる意義などを聞いた。

 ―11月のドイツの展示会で1メートルの部品が作れる大型装置を披露し、脚光を浴びました。
 「アトラス(ATLAS)と名付けたプロジェクトのもと、1メートル、2メートル、それ以上の大きさの部品に対応する装置を開発中だ。すでに12台が発売され、うちGEアビエーションなどに納入された6台で(欧エアバスや米ボーイングなどの航空機に採用される)LEAPエンジンの燃焼室向け部品の製造が始まっている。1メートルタイプの価格は350万ドル程度だ」

 ―独コンセプトレーザーのマシンがベースですが、スウェーデンのアーカム仕様の大型機は出てきますか。
 「アーカム機も将来ラインアップに入ってくる。金属を溶融するのにコンセプトレーザーではレーザー、アーカムでは電子ビームを使い、それぞれ異なる金属に対応できる」

 ―そもそもGEが装置メーカーを買収する意義とは。
 「我々はこの分野で包括的に全てを提供できる唯一の企業だ。金属パウダーから、装置・システムを提供し、ジェットエンジンやガスタービンまで作っている。GEはこの10年で金属積層について多くを学び、マシンの改善法にも詳しい。買収により社内でのノウハウを社外に提供し、産業全体に貢献できると考えている」

 ―日本は、米国やドイツに比べこの分野で後れを取っています。
 「日本には巨大な自動車産業が存在し、工作機械やレーザー、電機産業も集積する。我々にとって機会は大きい。ただ、手遅れにならないうちに日本側で積極的に行動に移す必要があると思う」

 ―GEの産業用IoT(モノのインターネット)基盤ソフト「プレディクス」と金属積層造形との連携は。
 「プレディクスを使えば、大量のデータを基にどこに不備や非効率な部分があるのかを瞬時に分析でき、プロセス全体の改善が図れる。これは素晴らしいことだ」
(聞き手=藤元正)

『スマートファクトリーJapan2018』
 日刊工業新聞社は「スマートファクトリーJapan 2018」を2018年5月30日(水)~6月1日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催します。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した情報管理システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。
 3回目を迎える今回は「スモールスタート支援ツール」の展示分野を設けたほか、また、同時開催の「2018防災産業展in東京」との連動企画として『スマートファクトリーを支える防災産業ゾーン』、昨年開催した「IoT・AI Innovation Forum」を『IoT・AI Innovationゾーン』として、新たに2つの特設ゾーンを設けます。
「スマートファクトリーJapan 2018」【出展者募集中】
日刊工業新聞2017年12月15日
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
GEは火力発電所向けガスタービンの需要減少により電力部門で大規模な人員削減を計画するなど、事業再構築の真っただ中にある。かたや新たな収益源として期待されるのがデジタルモノづくりやデジタルサービス。その中核として、金属積層造形事業とプレディクスには大きな期待がかけられている。

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