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化粧品と衣料品、“ファッション生産”で明暗

鉱工業指数から読み解く
 街はすっかりクリスマス仕様。店頭には華やかに飾られた商品が並び、買い物心をくすぐる。年末年始はイベントも多くあるため、新しい服や新作コスメが気になる方も多いのではないだろうか。

 経済解析室が毎月公表している鉱工業指数。実は業種別指数だけではなく、衣料品、化粧品といった、より細かな分類の指数も作成している。今回は、そんな身近で毎日身に付けるものでもある「衣料品」と「化粧品」の最近の動向について、少しご紹介したい。
                       

 上のグラフは、美容に関する産業を総合的に見るために経済解析室が試算した「ビューティー・ビジネス・インデックス(BBI)」のうち、製造(生産)部門をまとめた美容関連製造業指数と、その内訳の一部である化粧品類と衣料品類の指数の推移を示したものだ。

 美容関連製造業全体は上昇基調だが、その内訳指数の動きには大きな違いがある。好調が続いているのは化粧品類で、それとは対照的に、衣料品類は低下基調が続いている。

化粧品の生産増は、輸出も貢献


 生産が伸びている化粧品について、その出荷先(国内or輸出)を見てみよう。化粧品の出荷先はそのほとんどが国内向けではあるのだが、ここ数年の、化粧品出荷指数の前期比に対する寄与度(影響度)をみると、確実に輸出向けの増加(グラフの青い部分)の影響が強くなっていることが分かる。

 実は、今年第2四半期の化粧品の輸出向けの出荷量(輸出向け出荷指数)は、2010年からのわずか6年半で2.5倍にまで増加している。海外での日本ブランド化粧品の需要拡大の勢いが、好調な化粧品生産の一端を担っているようだ。

 もちろん国内向けも好調だ。最近は化粧品をドラッグストアで購入する方が多いようだが、ドラッグストアの商品別で食品部門に次いで伸びているのが、ビューティーケア部門で、化粧品の小売も順調に伸びている。
                    
            

輸入に圧迫される衣料品の国内生産


 一方、生産の低迷が続いている衣料品について、輸入を含めた国内総供給を見てみる。ここ数年の衣料品総供給量の推移を見ると低落傾向が続いており、国産品は輸入品にも圧迫され、低下している。同時に、意外にも多少低下スロープは緩やかとは言え、輸入品の供給量も低下している。

 総供給指数の前期比に対する国産と輸入の寄与度(影響度)を確認すると、ほとんどの期間で輸入の寄与が大きく出ており、衣料品総供給の変動は、すなわち輸入の変動ということになる。つまり、衣料品総供給の低下は、国産の低下もさることながら、輸入の低下によって生み出されていることが分かる。

 織物・衣服・身の回り品小売業の販売額自体は、マイナスにはなってはいないものの、かつての花形であったデパートの婦人服は長期低迷となっており、衣料品の需要が好調ということはないようだ。
                  
                
 国内生産、そして供給量全体も低迷している衣料品、他方で、輸出に勢いがあることもあって国内生産が増加している化粧品と、同じファッション関連品でもその動きには違いが出ている。イマドキは、流行のコーデより、メイクやスキンケアに力を入れる肌美人を目指すというのが、世の流れなのだろうか。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
衣料などは鉱工業指数には出てこないCツーC(フリマアプリなど)市場も、経済活動としてどのように反映していくべきか考えないといけない。

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