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化学大手は“うれしい誤算”に惑わされず、高収益事業の育成に集中できるか

6社の4―9月期は全社が営業増益。石化市況は高値安定
 総合化学6社の2017年4―9月期連結決算は全社が営業増益だった。国内外で市況高が続く石油化学事業で利ザヤが拡大。中国の環境規制強化が現地メーカーの生産低迷を招くほか、世界的に計画外の設備停止も多く、結果として健全だった市場環境が強い追い風となった。ただ、市況変動リスクを最小化する事業構造転換が数年来の基本方針のはず。“うれしい誤算”に惑わされず、高収益事業の育成に集中しなければならない。

 旭化成が7日発表した17年4―9月期連結決算は営業利益が前年同期比30・9%増の926億円と過去最高を更新した。坂本修一取締役兼常務執行役員は「高機能ポリマー、高機能マテリアルズ、エレクトロニクス事業が製品の差別性を生かして順調に業績を伸ばした」と述べた。

 それらケミカル部門の営業利益は同45・9%増の486億円だった。高機能化学のほかアクリロニトリル(AN)など石化事業も市況高で増益に貢献。電池セパレーター(絶縁材)などエレクトロニクス部門の営業損益も同59億円改善して56億円の黒字に転換した。同社は上期の好業績を受けて、18年3月期連結決算業績予想も上方修正した。

 総合化学各社は下期の石化市況を慎重に見ており、やはり高収益な付加価値型事業の出来が通期予想達成のカギを握る。

 三菱ケミカルホールディングスはディスプレー材料やエンジニアリング樹脂など機能商品部門の通期コア営業利益(非経常的な損益を除いた営業利益)を前期比5・1%増の990億円と着実な成長を目指す。住友化学もディスプレー材料などの情報電子化学部門の通期営業利益を同2・0倍の210億円を見込む。
                 
日刊工業新聞2017年11月8日
鈴木岳志
鈴木岳志 Suzuki Takeshi 編集局第一産業部 編集委員
業界全体として好業績の相次ぐ今こそ成長分野への投資を積極化し、残る構造改革を断行する絶好の機会だ。

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