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リチウムイオン電池の二番手集団、スマホ・ゲーム向け増産に動く

マクセル、TDK、村田…。トップグループを追撃へ
リチウムイオン電池の二番手集団、スマホ・ゲーム向け増産に動く

ATL製を採用していると言われる「ニンテンドースイッチ」(任天堂公式ページより)

 中堅リチウムイオン二次電池メーカーが、スマートフォンやゲーム機といった民生向けの電池増産に乗り出す。マクセルホールディングス(HD)は中国工場(江蘇省無錫市)に組み立て設備を11月中に導入する。TDKも2018年度に年産能力を17年度比15%程度引き上げる。ソニーから電池事業を買収した村田製作所は増産に向けて、19年度までに約500億円の設備投資を計画する。電池の発火問題でこれまでは各社とも設備投資に慎重だったが、世界的な需要増を受け、増産投資を加速する。

 マクセルは中国工場に、電池のセルに端子などを正確に装着する装置を増設する。増設や工場のレイアウト変更を含めて約10億円を投じる。17年度上期にセルの生産ラインを増設しており、組み立ても含めて増産体制を整える。

 同社の電池は高品質で安全性が高いのが特徴。17年には国内外のスマホメーカーから新たに受注を獲得した。使用回数による容量低下を正確に予測する機能、充電中の温度や電気特性をコントロールする機能なども付与できる点を訴求して受注を増やす。

 TDKは子会社の香港アンプレックステクノロジー(ATL)の生産拠点で設備を増強し、17年度は16年度比で15%増の生産能力を確保した。同社の製品は小型化や大容量で強みがあり「安全対策を行いつつ、ATLの供給力を発揮する」(石黒成直社長)方針だ。

 9月にソニーの電池事業買収で参入を果たした村田製作所は「まずは追い上げが優先」(村田恒夫会長兼社長)とし、スマホ向け電池を生産する中国工場(江蘇省無錫市)とシンガポール工場の2拠点で、能力増強を進める計画。

 同時に全固体電池など安全性向上に向けた開発も進める意向だ。電池事業で17年度は営業損益で50億円の赤字を見込むが、2―3年をめどに黒字化を目指す。
                  

(文=渡辺光太、京都・園尾雅之)
日刊工業新聞2017年11月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
富士経済によると、20年の民生向け小型リチウム電池の市場規模は、16年比27・3%増の1兆7131億円の見通し。韓国サムスン電子のスマホ「ギャラクシーノート7」が16年に発火問題を起こしてから、機器メーカーは急速充放電など利便性だけでなく、品質を重視する傾向が強まっている。価格面では中国勢が強いが、日本勢は高品質を訴求し巻き返しを狙う。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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