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ヤマハ発の次期社長がバイクをもっと面白くする!

社長交代を発表、モーターショーではAI搭載で人との関わりに新しい価値
ヤマハ発の次期社長がバイクをもっと面白くする!

ヤマハ発の「モトロイド」と柳社長(同社公式動画より)

 電気自動車(EV)や自動運転技術のアピールが目立つ東京モーターショーで、ヤマハ発動機の独創的な展示が異彩を放っている。

 「かわいい」「ちょっと怖い」。会場でこんな声が上がっているのが、同社初の人工知能(AI)搭載バイク「モトロイド」だ。デモでオーナー役の男性が手招きすると、スタンドで支えられていたバイクがゆっくりと起き上がり、近づいていく。

 バイクが不安定な状態になる静止や低速走行でまっすぐ立った状態を保てるのは、独自技術「アムセス」によるもの。車両の中心に配置したバッテリーユニットが振り子の重りの役割を果たして、重心をコントロールする。オーナーの顔やしぐさはAIで認識。まるで生きているかのようにオーナーを認識して動くモトロイドは単なる乗り物でなく、人とバイクの関わりの新しい価値を提案している。

 前回のショーで初登場したヒト型自律ライディングロボット「モトボット」はバージョン2として進化。目標の時速200キロ以上でのサーキット走行に成功したが、トップライダーのV・ロッシ選手には敗れた。自動運転は通常、車やバイクに手を加えるが、モトボットは市販のバイクを運転する。開発で得た高度な要素技術や知見は新ビジネスの開拓に生かす。

 このほか、旋回時に車輪が車体と同期して傾斜する独自のLMW機構では、小型電動立ち乗りモビリティや車輪が傾いて曲がるバイクから発想した4輪車を展示。常識にとらわれない個性的な展示で「ヤマハらしさ」(柳弘之社長)をアピールしている。

最年少取締役を抜てき


  ヤマハ発動機は2日、2018年1月1日付で社長に日髙祥博取締役上席執行役員企画・財務本部長(54)が昇格し、柳弘之社長(62)が代表権のある会長に就任する人事を発表した。日髙氏は最年少取締役からの抜てき。19年にスタートする新中期経営計画と30年に向けた長期ビジョンを新体制で策定する。

日髙氏は調達や企画、2輪車事業などに幅広く携わったほか、欧米やアジアなど海外での業務経験も豊富。10年にはリーマン・ショックの影響が残る米国法人に赴任し、再建策で手腕を発揮した。日髙氏は2日都内で会見し、「当社が持つモビリティとロボティクスの両技術を組み合わせて、新たな価値を提案し、成長していきたい」と抱負を述べた。
【略歴】日髙祥博氏 87年(昭62)名大法卒、同年ヤマハ発動機入社。14年執行役員、17年取締役上席執行役員。愛知県出身。

会見する日髙次期社長(右)と柳社長



日刊工業新聞2017年11月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
<日髙さんの素顔>  「ヤマハ発動機を次のステージに成長させるのが使命」と意気込む。海外経験が豊富で、リーマン・ショック後の米国子会社の立て直しなどで手腕を発揮。調達や企画など幅広い経験を積み重ねたオールラウンダーだ。  社長就任を打診されたのは数カ月前。「ただただ驚いた。ちょっと早いのではと思ったが、頑張ろうと思った」と率直に話す。柳弘之社長は「ヤマハは新しい事にチャレンジする会社。若い人の方が発想や想像力が豊か。3年前から次期体制を考えていた」と最年少取締役を抜てきした背景を明かした。  分析力に優れ、広い視野で一歩先の戦略を描く。「原理原則」を信条とし、常に「本質」を念頭に置く。柳社長が「私以上のヤマハファン」と紹介するバイク好きで、現在は同社のスーパースポーツバイク「YZF―R1M」を操る。スポーツ観戦では冷静沈着な雰囲気が熱く一変する。 (日刊工業新聞浜松支局編・田中弥生)

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