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再生可能エネを熱貯蔵し効率活用へ、1400度Cの高温に耐えるポンプ開発

米ジョージア工科大、溶融スズの輸送で72時間連続稼働
再生可能エネを熱貯蔵し効率活用へ、1400度Cの高温に耐えるポンプ開発

ギアポンプに組み込んだセラミックス製の歯車 (Credit: Christopher Moore, Georgia Tech)

 これまでより数百度C高い1400度Cの高温で稼働するポンプ装置を、米ジョージア工科大学などの研究チームが開発した。部品にセラミックスを使った機械式ポンプで、溶融スズのような極めて高温の液体の輸送を目的としている。溶融金属を媒体としたエネルギー変換やエネルギー貯蔵システムに将来応用できるという。

 応用面でもっとも期待されるのが再生可能エネルギー用のグリッドストレージ(系統電力用エネルギー貯蔵システム)。太陽光や風力で発電されたエネルギーを熱エネルギーの形で溶融スズや溶融シリコンに蓄えておき、必要な場合に電気エネルギーに変換する仕組みだ。蓄電池など既存のエネルギー貯蔵システムに比べ、低コストで実現できる可能性があるとしている。

 今回の研究はジョージア工科大機械工学研究科のアセガン・ヘンリー助教と大学院生のキャレブ・エイミー氏らが中心となり、パデュー大学やスタンフォード大学と協力して実施した。成果は12日の英科学誌ネイチャーに掲載された。

 媒体の温度が高ければ高いほど高効率で低コストの熱エネルギー貯蔵やエネルギー変換が行える一方、より高温の溶融金属に耐えられるポンプ装置やパイプの製造方法が大きな課題となっていた。

 そこで研究チームではセラミックスに着目。セラミックスはこうした機械システムには脆いとみられていたが、入念な設計を施した上、精密機械加工で部品を製造。柔軟性があり強度の高い黒鉛をポンプやパイプ、ジョイントの接合部にシール材として採用した。

 こうして直径36ミリメートルの歯車を組み込んだギアポンプを完成。歯車の回転により高温の液体スズが吸い出されるようにし、高温環境でのポンプの酸化を防ぐため、窒素雰囲気中で72時間連続で稼働させた。ポンプの回転速度は毎分数百回転。その間の平均温度は1200度C、最高温度は1400度Cを超えた。

 材料には機械加工しやすい窒化アルミニウムセラミックスの「シェイパル(Shapal)」を採用し、実験でポンプは磨耗に耐えたという。研究チームではより硬度の高いセラミックスの方が磨耗に強いと見て、炭化ケイ素を使ったポンプの製造にも取り組んでいる。
2017年10月15日付日刊工業新聞電子版
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
溶融スズより溶融シリコンは温度が高く、シリコンのコストが安いのでこちらも有望。ただ、2000度Cものより高温の溶融金属を扱うことになるため、技術的なブレークスルーが必要になるようです。

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