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「業務効率で世界の医療機器トップに大きく劣後」(オリンパス社長)

笹社長に聞く「経営陣や社員の意識などが変わらないとだめ」
「業務効率で世界の医療機器トップに大きく劣後」(オリンパス社長)

笹社長

 オリンパスは2020年度までの5カ年の中期経営計画で「医療分野で確固たるグローバルプレーヤー」の達成を掲げた。中計が始動して1年半がたち、計画初年度となった17年3月期は成長を期待した医療事業が低調で減収減益だった。「競合と戦える経営基盤を構築する」と語る笹宏行社長に今後の事業戦略を聞いた。

 ―成長を期待する医療事業が低調です。
 「主力の消化器内視鏡は新興国では2ケタ成長と好調を維持するが、先進国で伸びていない。製品のライフサイクルが終わりに近づいており、想定内だ。成長を期待していた外科製品では、外科手術用エネルギー機器『サンダービート』はどの市場でも2ケタ成長を続けているが、従来の機器が減少している。手を打っているのでいずれ売り上げも戻る」

 「ソニーと開発した4K技術を搭載した外科手術用内視鏡システムは、他社の顧客先に切り込めている。戦略的な目的は達成している。だが競争も激化し商談も長引いている。今春投入した外科手術用内視鏡システムを自社顧客先に入れ替えを進めるとともに、4Kで開拓した顧客先にも導入していきたい」

 ―今後のグローバル展開の手だては。
 「当社は製品力は強く、販売強化も引き続きやっていくが、陣容は十分に整ったレベルにある。問題はどう業務の効率を上げるかだ。業務の効率で言えば世界の医療機器トップと比べて、大きく劣後している。経営陣や社員の意識などが変わらないとだめで、すべてのステークホルダー(利害関係者)に当社が高い品質を持つ企業ということを認識してもらうことが重要だ」

 ―今春に手術室向けの映像配信を手がける米イメージストリームメディカル(ISM、マサチューセッツ州)を買収しました。
 「病院の業務効率を上げるためには製品単品だけでなく、業務全体で効率を上げた方が良い。ISMの買収はそれを想定した。逆に業務全体を包括できる基盤がなければ、顧客から相手にされない。M&A(合併・買収)は事業を伸ばす手段として積極的に考える」

 ―最終年度の20年度に売上高1兆1000億円(16年度は7480億円)とする目標値を見直す考えは。
 「消化器内視鏡の新製品を中計の後半に投入する計画であり、新製品を投入すれば高い成長が達成できる。外科製品の新製品投入が遅れたことや、品質問題にも手も打った。やるべきことをしっかりやれば到達できないレベルではない」
(聞き手=村上毅)
日刊工業新聞2017年10月5日
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
消化器内視鏡で世界シェア7割、海外売上高比率8割と名実ともに世界企業である。だが競合と見比べた時に今後も競争力を保てるのか、という強い危機感を抱いているようだ。オリンパスと同様に各社が「低侵襲治療」に軸足を移し、競争は激しい。世界展開の器が整いつつある中、人材登用を含めた中身の充実が今後のテーマだ。

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