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柏崎刈羽「適合」、日米原子力協定の自動延長へ追い風に!?

原子力規制委が審査書案を公表、知事は依然再稼働に慎重
柏崎刈羽「適合」、日米原子力協定の自動延長へ追い風に!?

柏崎刈羽原発を視察視察する新潟県の米山隆一知事㊧(今年2月)

 原子力規制委員会は27日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機(新潟県)が新規制基準に適合しているとする審査書案を公表した。規制委は同日の定例会合で審査書案を議論。案をまとめた事務局の原子力規制庁に対し、委員から質問が相次いだ。

 更田豊志委員長は「次回の委員会で回答してもらい議論を続けたい」と述べ、結論を10月4日の次回会合に持ち越した。

 事故を起こした東電福島第一原発と同じ沸騰水型原子炉で初の審査書案。規制委が了承すれば約1カ月の意見公募を経て正式決定されるが、再稼働には他に二つの認可が必要な上、新潟県の米山隆一知事は福島原発事故の検証を優先する考えを示しており、再稼働の時期は見通しが立たない。

 審査書案は、福島第一原発で起きたような過酷事故の対策について細かく想定。電源を失った際の炉心損傷防止について、非常用冷却装置が作動しない場合は別ルートで注水するほか、消防車を利用するなど多様な注水手段を確保した。

 原子炉格納容器の破損防止では、放射性物質をフィルターで吸着させた上で容器内の圧力を逃す「フィルター付きベント」に加え、車載式の冷却装置などを組み合わせた「代替循環冷却系」を採用。外部に放出される放射性物質が少ない代替循環冷却系を優先して使うと定めた。

 想定される地震の揺れ(基準地震動)は6、7号機付近で最大1209ガル(ガルは加速度の単位)。審査の中で、規制委が震源となる断層をより長く設定するよう求め、基準地震動が申請時の約1・5倍となった地点もあった。
日刊工業新聞2017年9月28日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 日本の核燃料サイクル保有を認めた現行の日米原子力協定は、来年7月に30年の有効期限を迎える。これを自動延長するかどうかは、日本政府の原子力行政の在り方にかかわってくる。IAEAによると、福島原発事故後の日本政府の対応をみて、米国は日本が脱原発に向かっていると推察しているという。事故から6年以上経過したにも関わらず、原発再稼働の見通しが不確実で不透明だからである。  その象徴的な例として柏崎刈羽原発の動向を米国は注目していた。このたび原子力規制委員会は、東電の安全性向上に取り組む姿勢を評価し、原発を再び運転する適格性を認める方針を決めた。その結果、規制委は27日、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が新規制基準に適合しているとする審査書案を公表した。ただ、米山隆一新潟県知事は再稼働に慎重な姿勢を示しており、稼働時期のメドは立たないが、今回の「適合」審査書案公表は、日米原子力協定の自動延長への追い風になろう。

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