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1時間以上燃えない建築木材、大手ゼネコンが開発に力

火災時の退避時間稼ぐ
1時間以上燃えない建築木材、大手ゼネコンが開発に力

耐火集成材を使った木造建築(鹿島のFRウッドを柱と梁に適用)

 建築物における木材利用の促進に向け、大手ゼネコンが、火災に強い木質材料である耐火集成材の開発、適用を進めている。二酸化炭素(CO2)の排出削減や国内林業の活性化、木質素材にこだわる建築ニーズを背景に、技術開発に力を入れる。耐火集成材は通常の木材と比べ、燃えにくい構造を持ち、木の質感を生かせるのが特徴。価格が割高なのが難点だが、普及・拡大に向け、コスト低減に取り組む考えだ。

 耐火集成材は、建物が火災に遭っても「簡単に崩れないようにして避難や消火の時間を稼ぐ」(ゼネコン関係者)役割を果たす。このため1時間耐火など一定時間の耐火性能を持つ。耐火集成材の多くは3層構造になっている。中心部に荷重を支える木材を、その周囲に石こうボードなど燃えにくい材料を用いた「燃え止まり層」を配置。その外側に、燃えても建物構造上に影響を与えない「燃えしろ層」で構成している。

 ゼネコン大手は耐火集成材の開発を進め、適用を始めている。実績を伸ばしているのが、竹中工務店の耐火集成材「燃エンウッド」だ。これまでに7件の適用実績がある。燃え止まり層に木とモルタルを交互に配置し、モルタルで熱を吸収しながら燃焼を停止させる。1時間の耐火性能を持つ。

 鹿島は東京農工大学など4者で開発した耐火集成材「FRウッド」の適用を進めている。燃え止まり層にも木材を採用したことで、木材利用100%であるのが特徴。燃え止まり層に難燃薬剤を注入して、1時間の耐火性能を確保している。適用実績は3件ある。

 大林組はシェルター(山形市、木村一義社長、023・647・5000)の技術協力を得て、汎用木材を使った2時間の耐火機能を持つ耐火集成材「オメガウッド(耐火)」を展開している。単板の積層材を複数接着する木質材に比べ、約60%のコストを削減できる。

 清水建設は菊水化学工業と耐火集成材「スリム耐火ウッド」を開発している。燃え止まり層は、耐火シートと強化石こうボードを組み合わせた二重構造で耐火性能を向上。他社製と比べ、燃え止まり層と燃えしろ層の厚さを最大で半分程度にできる。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2017年9月22日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 国内では2010年に「公共建築物等木材利用促進法」が施行され、公共建築物を中心に木材利用が進められている。木のぬくもりや温かみ、質感などから「意匠性を評価して木造建築をつくりたいというニーズがある」(ゼネコン関係者)という。 (日刊工業新聞第二産業部・村山茂樹)

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