東芝メモリ売却、土壇場で混迷。WDとの交渉に含みは持たす

日米韓連合と契約できるかも予断を許さない

 東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却は、売却先選定が最終段階になっても混迷している。目標としていた13日の決定を見送り、米ベインキャピタルが主導する「新日米韓連合」と契約締結を目指し協議することで覚書を交わしたと発表した。東芝は11日、米ウエスタンデジタル(WD)が軸となる「新日米連合」に売却する方針を一度は固めたが、将来の出資条件などで合意できず正式決定には至らなかった。ただ今後、WDなどとの交渉に含みは持たせている。

 「13日に売却先を新日米連合に決め、20日に契約する方向」―。東芝メモリ売却の交渉関係者によると、手続きに携わる証券会社が買い手企業側に11日連絡を入れた。

 新日米連合はWDのほか米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)や政府系ファンドの産業革新機構、日本政策投資銀行などで構成する。将来、KKRがWDに東芝メモリ株を譲渡し日本勢による主導体制を脅かすリスクが指摘されてきた。11日時点の出資スキームは「日本勢がより多くの議決権を握れる形にアップデートされていた」と別の関係者は証言する。

 東芝とWDは東芝メモリの経営権について交渉を続けていた。9月に入り、わずかながらWDが譲歩の姿勢をみせたことから、東芝は銀行や経済産業省も推す新日米連合に売却する方針を11日までに固めた。東芝も「(新日米が提案する)地雷ある道か、(新日米韓が提案する)定まらない道を進むかのどちらか」(東芝関係者)と一定のリスクを飲む覚悟を示していた。

 ただ、WDは東芝の想定以上に頑なだった。現時点ではWDは東芝が許容できる水準まで譲歩しておらず、13日の売却先決定は見送られた。

 ベインは米アップルを加えた新日米韓連合を形成し、WDの訴訟リスクを低減する案を盛り込んだ新提案を出している。買収額も上積みした。東芝はこうした条件を鑑み、同連合との協議を加速していく方針を示した。

 ただベインの新提案でも、WDの訴訟リスクをゼロにするのは難しい。東芝は適時開示資料で「覚書には同連合を排他的な交渉先とする定めはない」としている。

 WDは13日、東芝が新日米韓連合と覚書を交わしたことについて声明を発表。WDの同意なしに東芝メモリを売却できないと改めて主張し、東芝が同連合と協議を継続することについて「驚きを禁じ得ない」と批判した。

 東芝はWDとの協議を続けることにしており、新日米韓連合と契約できるか予断を許さない。
                   

(文=後藤信之)

日刊工業新聞2017年9月14日

安東 泰志

安東 泰志
09月14日
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 まず東芝の取締役は、株主に対する善管注意義務の観点から、最高値を示した陣営と交渉する義務を負っている。その観点からは、仮にホンハイなどが示した価額が他より優っていれば、それを選択しなければならない。技術流出などは株主利益とは直前関係ない。
 次に、少数株主が乱立するスキームの場合は、株主間協定の交渉が苛烈を極める。ファンドは投資家に、事業会社は株主に、夫々善管注意義務を負っている以上、当然である。仮にそれが纏まったとしても、新東芝メモリの経営は、株主間協定に縛られてしまい、機動性のないものになるだろう。しかも、WDとの係争の先行きも見通せない。従って、この交渉は恐らく纏まらないし、無理に纏めるべきでもない。
 東芝の上場維持には何の意味もない。3年以内に東芝メモリを上場させ、それによって債務超過を脱する東芝も再上場すればよいのだ。

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