有機EL採用の「iPhone X」、日本の電子部品メーカーはよりチャンスに!?

部品点数が増加、技術力の底上げにも

 米アップルの新型スマートフォン「iPhone X(アイフォーン テン)」に、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)など高度な技術が搭載されたことは日本の電子部品各社にとっても期待が大きい。新技術・機能の追加を踏まえ、部品点数の増加を見込んでおり、今後の業績に好影響を及ぼす可能性がある。また新型アイフォーンへの対応に伴い、各社の技術力の底上げにもつながっている。アップルへの過度な依存の問題は残るものの、先駆的なニーズに挑戦し続けることは部品メーカーにとっても“力試し”の場所となっている。

 13日(米国時間12日)に発表されたアイフォーンの代表的な特徴は、有機ELパネルを全面的に採用した点だ。これに伴い、液晶端末と比べてスマホ内部の構造が大きく変化したほか、薄型化も進んだ。

 アップルの有機ELシフトが、日本のディスプレー関連メーカーの明暗を分けている。液晶パネルを供給するジャパンディスプレイ(JDI)とシャープは、有機ELパネルの量産化でサムスンディスプレイに後れを取っている。特にJDIはアップル向けの売上高が全体の5割を超え、依存度が高い。JDIの有機ELパネル量産化は19年度からの見通しで、中国のスマホメーカーも含めて有機ELシフトが進めば、経営に大きな打撃となる。

 シャープは18年4―6月に有機ELパネルの少量生産ラインを稼働する計画で、スマホ市場の有機ELシフトを注視している。ただ、ディスプレー事業は、親会社の台湾・鴻海精密工業とともに高精細の8Kテレビなどを優先する方針に転換している。このため、有機ELパネルは市場の動向を見ながら、チャンスをうかがう姿勢のようだ。

 また、JDIも液晶パネルにまだ商機があるとみる。中国シャオミの新モデルに、4辺の額縁を極限まで狭くした注力製品の「フルアクティブ液晶」が採用された。新型液晶の販売拡大を図る。

発光材料は日本勢がシェアの大半を握る


 一方、アップルの有機ELシフトは、日本の素材メーカーにとって大きなチャンスでもある。主要材料である発光材料は日本勢がシェアの大半を握る。最大手の出光興産は、有機EL主要部材で17年度に前年度比2ケタ成長を見込む。緑色の発光材料を得意とする新日鉄住金化学も、「米中韓の有機ELスマホの伸びは確定していないが、相応の伸びになると期待している」と話す。

 出光興産は、発光材料のほか、電子輸送材や正孔輸送材など主要部材を全て手がけ、強気の姿勢で生産能力の増強を進める。4―9月期に韓国の生産子会社の生産能力を従来比1・6倍の年8トンに増強し、全社で同10トンに拡大する。また、LG化学と特許の相互利用について契約するなど、他社との連携も含めて需要拡大に備える。

 電子部品メーカーの反応はどうか。内部構造の複雑化を受け、村田製作所は樹脂多層基板「メトロサーク」に期待を寄せる。メトロサークは複雑な形状の回路を実現できる基板で、すでに富山村田製作所(富山市)を中心に増産を見込む。また日本航空電子工業は、背幅が短いコネクター製品の開発を進める。やはり、有機EL端末の普及を見据えた取り組みだ。

 変化は外形だけにとどまらない。有機ELは大電流を必要とするため、電流値を調整するICや大容量型コンデンサーなどの搭載が増えた。積層セラミックコンデンサー(MLCC)を主力とする太陽誘電は「(有機EL端末の普及により)今後もコンデンサーの搭載数が増加する」とみる。

 そのほか、アイフォーンとしては初めて非接触充電を採用。事実上の標準になりつつある国際規格「Qi(チー)」に対応した。ロームは同規格に対応した送受信用制御ICを手がけており、すでに韓国メーカーなどへの納入実績もある。ビジネスの拡大に向け、さらなる需要増を期待する。新型アイフォーンの投入は、電子部品各社にとって新たなビジネスを生み出す契機になっている。
ロームが手がける非接触充電用制御ICを用いた評価ボード

今期の業績押し上げ


 今回の新機種は機能が豊富なことから、アップルの本格生産が例年より遅れているとされる。ただ、圧倒的な販売力を踏まえると、各社の2017年3月期業績を押し上げる可能性が高い。アルプス電気の気賀洋一郎取締役は「(アップル向けの受注は)滑り出しが良いため、業績が上振れるかもしれない」と自信を示す。すでに複眼(デュアル)カメラ用アクチュエーターの17年4―6月期売上高は前年同期比1・5倍に拡大した。

 太陽誘電も17年4―6月期にコンデンサーの受注残高が約284億円と過去最高に達した。「多少、出荷のタイミングは遅れているものの、夏以降に売り上げに貢献してくるだろう」(太陽誘電関係者)という。一方、村田製作所は主力のMLCCなどについて「受注残は多いが、生産能力は限界。今年1年は忙しい」(藤田能孝副会長)と打ち明ける。

  アルプス電気は今回の新型アイフォーンに合わせ、有機ELパネルに特化したインダクターを4年ぶりに開発した。独自の金属磁性材料「リカロイ」を使用しており、有機EL端末に対して省エネなどの特性を発揮する。アップルだけでなく、中国メーカーの有機ELパネル採用を見据えた製品だ。

 一方、日本写真印刷は主力のスマホ向けタッチセンサーを三つの工場で量産する。「当社のタッチセンサーはフィルムベース。有機ELとは親和性が高い」(広報部)としており、有機ELの潮流にうまく乗ろうとしている。また中核部品の二次電池を供給するTDKは性能を高め、従来機種と比べて駆動時間を2時間延長したことに貢献する。電池については、ソニーの電池事業を買収した村田製作所との競争が激化するかどうかも注目される。
(渡辺光太、堀田創平、京都・園尾雅之)

日刊工業新聞2017年9月14日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
09月12日
この記事のファシリテーター

モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤昌司アナリストは「各社はスマホ市場や特定顧客からの依存脱却を掲げているが、スマホ関連ビジネスが活躍できる領域であることは間違いない」と分析する。特にアップルは、各社にとって特別な存在だ。アップルの厳しい要求に対応するため、最新鋭部品の開発・生産を進め、それが中国スマホメーカーなど新たな顧客の獲得につながった。アイフォーンの進化とともに大きく飛躍してきた日本の電子部品各社。今後も難易度の高い部品を求めるアップルに刺激を受け、飽くなき技術革新を進めることになる。
(日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。