PDエアロが低コストの単一エンジン開発、民間宇宙旅行へ前進

圧縮機を持たない筒型構造、超音速の熱風を伴う燃焼を推進力に利用

 PDエアロスペース(名古屋市緑区、緒川修治社長)は低価格な宇宙旅行の実現に向け、単一エンジンによる「ジェット」と「ロケット」の燃焼モードの切り替え実験に成功した。ロケット発射台ではなく飛行場から離陸でき、発射のコストが減らせる。開発したエンジンは今後、機体に搭載し高度100キロメートルの宇宙空間への到達を目指す。同社にはANAホールディングス(HD)などが出資、2023年末の宇宙旅行事業化を計画する。

 現在、米国などで民間が開発する宇宙機は、ロケットエンジンもしくはロケットエンジンとジェットエンジンを両方搭載する。両方搭載するとシステムが複雑になりコストがかさむ。

 PDエアロが開発したのはパルスデトネーション(PD)方式のエンジン。圧縮機を持たない筒型構造で、デトネーション(爆轟)と呼ぶ超音速の熱風を伴う燃焼を推進力に利用する。

 単一エンジンでジェットとロケットを切り替えるため、システムを簡素化できる。ジェットモードで空気のある高度15キロメートルまで飛行後、ロケットモードに切り替えて上昇。宇宙空間に到達し、大気圏内に戻ると再びジェットモードに切り替えて着陸する。構造がシンプルで、宇宙旅行費用低減につながる。

 今回の実証用エンジンは酸化剤として、ジェットモードでは圧縮空気を、ロケットモードではガス酸素を使用した。燃料は液化石油ガス(LPG)。エンジン内の圧力波形、ピーク圧力、火炎伝播(でんぱ)速度の3種類のデータを取得し、燃焼モードを切り替えたことを確認した。

 今後、エンジンを多筒化し、推進力を高める。18年10月に無人機での高度100キロメートル到達を計画。20年10月には有人機での到達を目指す。
                 

日刊工業新聞2017年9月12日

杉本 要

杉本 要
09月12日
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最近は米国の宇宙ベンチャーがよく話題になりますが、緒川社長は07年から「完全再利用型宇宙往還機」の開発構想を掲げており、日本の宇宙ベンチャーの中でも草分け的な存在だと思います。「パルスデトネーション」エンジンは同社の社名の由来でもあります。今回の実証用エンジンの成功をテコに、いよいよ有人飛行にも使えるレベルのエンジン開発をスタートさせます。

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